堂安律のシュートはGKの判断を一瞬迷わせる。「骨盤の回旋」の連動がもたらすキックの特徴とは?【動作分析コラム】
●「蹴り足×軸足×上半身」キックはこの3つの掛け合わせで決まる
カットインからのシュートにおける蹴り足、軸足、上半身の動きを大別すると、蹴り足は『インパクトの直前で骨盤の回旋を止めて走らせる』↔︎『骨盤の回旋と連動して内側に振り抜く』、軸足は『股関節の伸展(起こし回転)』↔︎『膝を抜く』動きになります。さらには、フォロースルーで上半身は『ねじり戻し』↔︎『身体全体の向きを変える』動きが参加します。 トップレベルの選手ほど、この『蹴り足×軸足×上半身』の組み合わせ方やそれらの動きの比率(どれくらいの角度で骨盤を回旋するか、膝を抜くか、等)が多彩になるため、状況に応じてキックのフォームを微調整する能力も高くなります。助走速度や角度、ボールの置きどころに合わせて動作の最適解を出すことで、質の高いキックが可能となるのです。 堂安はニアサイドへのシュートは得意な形ですが、『形』といっても全て同じフォームで蹴っているわけではありません。カタールW杯のスペイン戦で決めたゴールは、先に解説した2つのシーンで言うと、シリア戦での形の延長上にある蹴り方になります。
●堂安律と久保建英のキックの違い
シリア戦よりも助走が長くスピードに乗っているため、『骨盤の回旋と連動して蹴り足を内側に振り抜く』動きと、上半身の『ねじり戻し』の要素が少なく、軸足の『膝を抜く』と『身体全体の向きを変える』動きの比率を多くすることによって、インパクトの強さを生み出しています。 大会後のインタビューで、堂安はこのゴールについて「ギリギリまでファーサイドを狙うか迷った」とコメントしています。これは、ニアサイドに強いボールを蹴れることが前提にあることで可能となる考え方ですが、結果的にゴールキーパーにコースが読まれにくいフォームにもなっていると思います。 堂安と同じく右サイドを主戦場とする久保建英のカットインからのシュートは、彼の得意なキックの形である、『インパクトの直前で骨盤の回旋を止めて蹴り足を走らせる』と、軸足を外して『身体全体の向きを変える』動きの組み合わせが土台にあります。 久保のカットインからのシュートは、インパクト後に軸足を地面から外して蹴り足から着地する動きになるため、ちょうどジャンプしながら蹴っているような印象があるのではないでしょうか。 この蹴り方は、身体を大きく捻ってニアサイドへズドンッ! というキックには不向きなため、久保はスピードに乗った状態でペナルティーアーク付近まで侵入した場合は、ファーサイドを狙うシーンが多くなる印象があります。 堂安は、今季のブンデスリーガ第4節のハイデンハイム戦ではカットインからファーサイドに鮮やかなゴールを決めています。ゴールキーパーから読まれくいフォームで、かつニアからファーサイドまで広角に高精度の強いボールを蹴り分けられることは、堂安の大きなストロングポイントと言えるでしょう。 (文・三浦哲哉)
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