堂安律のシュートはGKの判断を一瞬迷わせる。「骨盤の回旋」の連動がもたらすキックの特徴とは?【動作分析コラム】
●上半身のしなやかさが大事。「ねじり戻し」とは?
ボールインパクト~フォロースルーで大きく(右)回旋していく骨盤の力を吸収するためには、胴体部分は骨盤と一体で動くのではなく、骨盤→胸郭の順番でズレを生みながら(右)回旋することが必要になります。 後ろからのアングルでスロー動画を見ると確認しやすいですが、この一連の上半身の動きは『ねじり戻し』と表現され、フィニッシュはちょうど胸郭の回旋にあわせて肩甲骨~腕がブルンと振りほどけるような形になります。 『ねじり戻し』には、骨盤と胸郭を繋ぐ背骨全体が連動してスムーズに動くことが必要ですが、堂安は上半身のしなやかさがあるため、この動きが可能になります。 現在は、SNS等で選手のトレーニング動画が挙がることがあります。上半身に厚みがあり体格のしっかりしている堂安ですが、エクササイズをしているシーンを見ると、背骨や胸郭、骨盤(股関節)を捻る柔軟性の高さが土台にあるのが分かります。是非、注目してみてほしいです。
●軸足は固めるのではなく柔らかく。違う動作が生んだカットインシュート
今季のブンデスリーガ第6節、ブレーメン戦での堂安のゴールも、同じ右サイドからカットインしてニアサイドへシュートした形です。ただし、このシーンは軸足の『膝を抜く』動きの質の高さが顕著に現れたゴールになります。 このシーンは、右サイドのタッチライン沿いから内側に切れ込む形でスピードに乗っています。ここからニアサイドにシュートを打つためには、踏み込んで地面反力をもらった後に助走の勢いを緩衝する必要がありますが、軸足は固めるのではなく『膝を抜いて』柔らかく使うことが要求されます。踏み込んだあとに上手く『膝を抜く』ことによって、股関節を支点としてすねが前に倒れていきながら膝が曲がる動きが出現します。 『膝を抜いて』軸足を深く曲げていくことで重心が下がっていきますが、その動きにあわせて『インパクトの直前で骨盤の回旋を止めて蹴り足を走らせる』形で内側にスイングすることで、身体の真下寄りにあるボールに上手くミートさせ、倒れ込みながらも身体の重さが乗った低い弾道のシュートを打つことが可能となっています。