実態のない「就労支援」で月26万円を不正受給、「移動支援」の中身は“たこ焼きパーティー”…なぜ介護業界で不正がまかり通るのか?
“内部告発頼み”の取り締まり体制
同社の例を挙げながら、不正を事前に見抜くことはできるのか、大阪市福祉局の担当者に聞くと、こう説明した。 「実地指導を定期的に行っており、そこで不正が見つかれば監査に移行します。指導の場合は、見るべき視点が厚労省から示されており、それに即した形で事業者の運営について確認しています。もし不正があれば、程度に応じて、指定の取り消しなど行政処分を行うこともあります」 だがさらに突っ込んで聞いてみると、内部告発でもないと不正をみつけるのは難しいと吐露し、他の自治体でも概ね同じだろうと語った。 「従業員や利用者の方の通報などが大きな情報源となります。不正であると指摘する場合、それを立証する責任は行政側にあるので、確たる証拠が必要になってくる」 確かに立証責任は行政側にあるだろう。だが、確たる証拠を探すために実地指導や監査をしているのではないのだろうか。まるで、証拠を持ってきてくれる内部告発者任せになっているような印象を受けた。 以前取材した介護職の一人は、「行政側も面倒に思って、不正を見て見ぬふりをする担当者がいる」と話したことがあった。 冒頭のB社関係者は、こう訴える。 「不正を放置すれば、結果的には不良業者が増えて、利用者の方が受けるサービスの質の低下にもつながると思います」 文/甚野博則 写真/PhotoAC
---------- 甚野博則(じんの ひろのり) 1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から「週刊文春」記者に。「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして、週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。本書が初の単書となる。介護に関する情報提供はぜひ(hironori jinno2@gmail.com)までお寄せください。 ----------
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