エッセイスト・松浦弥太郎さん、50代で未知のIT業界へ転職した理由
暮らしについての著書を数多く出版しているエッセイスト松浦弥太郎さんは、現在58歳。50代になったころから、漠然とした不安を感じるようになったそうです。そんな不安に向き合いながら、今の自分の基本について考えた『松浦弥太郎のきほん』(扶桑社刊)も発売中です。ここでは、松浦弥太郎さんが大事にしている生き方について伺いました。
50歳になったら新しいチャレンジをしたかった
『暮しの手帖』の編集長などを務めたのち、ちょうど50歳でIT業界に転身した松浦弥太郎さん。エッセイストとして、著書も多数出版しています。軽やかに変化しながら暮らす、松浦さんの「きほん」についてたっぷりと伺いました。 ――50代での気持ちの変化はありましたか? 気持ちの変化というよりも、新しいチャレンジをしたいという気持ちはありました。というのも、30代は連載を10何本もち、3日に1回くらい締めきりという生活、40代は『暮しの手帖』の編集長で仕事に没頭する日々。 アウトプットばかりした30代、40代。もうすぐ50歳というタイミングでこれからの自分の人生を考えたとき、思いきったチャレンジをするには50代しかないなと。49歳が自分の人生の頂点、とはしたくなかった。過去に自分がやってきたことの貯金の利息で生きていくようなことはしたくなかったんです。だから、そのタイミングでそれまでのキャリアをリセットしようと思って。 ――アナログからデジタルへ。IT業界への転身を決めたのは? 自分が学びたかったからというのと、困ったりオロオロする環境に自分を置きたくて。ITについては知らないことだらけで毎日が勉強でした。周りはほとんどが20代。出口に近い席に座って、みんなに頭を下げて「教えてください」といろいろ教えてもらいました。新しい言語もたくさん覚えましたよ。 ただ、現代のテクノロジーは取り入れつつも、自分の生き方は犠牲にしないことを強く意識しています。AIは辞書代わりに活用はするけれど、仕事でだけ、とかね。 ――生き方で意識していることはありますか? 暮らしは変わっていくのが当然。だから、日々、変化していくことを楽しむ。生きている証として変わり続けたいと思っています。過去の生き方と矛盾していてもいいし、むしろその方がいい。矛盾=嘘ではない。変化しているという証だからいいんですよ。