エッセイスト・松浦弥太郎さん、50代で未知のIT業界へ転職した理由
変わることは、成長すること
――変わることに、怖さはありませんか? 松浦:むしろ楽しいくらいです。僕はずっとアウェーの世界を選んで生きている。だってその方が学びがあるでしょ。変わるのが怖くないのは、自分を信じて、自分を諦めてないからかな。もっともっと変わっていくし、もっともっと成長する。自分で無理と決めつけなくていい。じゃないと、成長が止まっちゃう。 そのために、ルールはつくらない。いまは毎日、朝走ってはいるけれど、それはルーティンではないんです。いま気持ちいいから続けているだけ。必ずしなければならない、になるとルールになってしまう。ルールになると縛られてしまうから。いつも自分に問いかけながら、自分に正直に進むのみです。 ――いつも自分に問いかけている? 思考は止まりません。ずっと考えています。答えは見つからなくていいんです。そんな簡単に答えは見つからないから。ずっと同じことを悩み苦しんで、思考し続けています。見つけるのは答えじゃなくて「手がかり」。 いまの世の中は答えがすべて。正しい答えを求めようとしている。でも僕は答えというのはないと思っていて、もっと大事なのは「問い」だと思っています。いろんな問いがある。60歳になったときになにをしたいのか、今日1日はどうして過ごしたいのか。その問いをすることで、思考が始まる。 でもみんな問いをしないで、すぐに調べてしまう。つまり考えていない。僕はずっと問いかけているから、それが学びにつながり、気づきにつながる。 ――問いかけ続けて、答えが見つかることはありますか? 人の話を聞いたり、本を読んだり、なにかがきっかけでいつか「あ、こういうことかも」とわかるときもあります。 でも、せいぜい僕が得ているのは「かもね」です。自分が悩み疑っていくなかで、行き着くのはそうかもね、なんです。その「かもね」はもちろん変わることがある。そのときはそう思っていたけど、いまはもう変わっている。それでいいんです。
ESSEonline編集部