「奄美にあるハブ屋」使用禁止Xデーに向けた対策。ハブを知ってもらうための取り組みも
商品コンセプトをつくってから12年後の2018年、武臣さんたちの心配を裏づける出来事があった。仏のラグジュアリーブランド「シャネル」が、ヘビやワニなどの革を指すエキゾチックレザーの使用廃止を発表したのだ。 「ああ、やっぱりそうなったか、と思いました。これからも奄美のハブの歴史や文化を落とし込んだ商品、コンテンツ商品に力を入れていくつもりです」(長男・武臣さん) 武臣さんたちは「3桁商品」の品揃えにも力を入れている。ハブ革やハブの骨を使った商品は人件費がかかっているだけに価格を1000円以下にするのが難しい。しかし、店にやってくる子どもたちにも本物のハブに触れてほしいという思いから、数百円で買える商品を増やしている。
「大人向けの商品で固めるやり方もあると思いますが、うちは奄美に旅行に来た家族連れが子どもから大人までみんなで楽しめる店にしたい。そこで200円台から買えるお守りのようなリーズナブルな商品を増やしました。 また、原ハブ屋のオリジナル商品ではありませんが、百均ぐらいの価格設定のおもちゃや雑貨を置く『原商店』というコーナーも始めました。せっかく奄美に来たのだから、できるだけ多くのお客さんに楽しんでほしいと思っています」(長男・武臣さん)
■原価割れの問題も解決 かつて親子げんかの種になった商品の原価割れの問題も解決した。武臣さんがExcelで自作したシステムでかんたんに原価計算ができるようになったのだ。 「この商品って儲かってるの? 儲かってないの? と不安を抱きながら商品をつくるのは正直ストレスでした。でも、原価計算システムで作る前にシミュレーションができるから、安心して商品開発にチャレンジできるようになった。商品開発のスピードが上がり、商品の幅も広がりました」(長男・武臣さん)
3兄弟が次々に店の改革をしていることを父・武広さんはどう思っているのだろうか。 「息子たちからは『なんで原価割れなの?』『こんなに借金して』と言われてけんかになったこともありました。でも指摘は全部当たっているし、3対1で負けてしまうから、最近は言うことを聞いています。おかげで、新店舗をつくるための借金も返し終わりました。息子たちはそれぞれ家族を養っていかないといけませんから、いろいろ考えてやっているみたいです」(2代目・武広さん)