「奄美にあるハブ屋」使用禁止Xデーに向けた対策。ハブを知ってもらうための取り組みも
■ハブを知ってもらうためのコンセプト そこで生まれたのが、新たな商品コンセプト「ハブを知り、理解してもらうためのきっかけづくり」である。なぜこのようなコンセプトにしたのだろうか。 「商品のためにハブを殺すことは一切ない、とお客さんに伝えるためです。環境保護や動物愛護の潮流は日本にいても無視できないほど大きくなっています。お客さんから聞かれたときに、そこにしっかり答えられる商品づくりをしようと考えました」(長男・武臣さん)
武臣さんによると、原ハブ屋の商品を見て「財布を作るためにハブを殺しているの?」とお客さんから質問されることがあるという。 だが、商品のためにハブをわざわざ捕りにいくこともあったのは祖父や父の時代まで。現在、原ハブ屋が商品の原料とするのは、すべて自治体の買い上げ事業で住民が持ち込んだ駆除ハブだ。 それを必要に応じて自治体から買い取り、加工品を作っている。そのスタンスを明確にするために、奄美大島に生息する無毒ヘビ・アカマタを使った商品をやめる決断もした。
商品コンセプトをつくった理由はもう1つある。将来、環境保護や動物愛護の流れがさらに大きくなれば、ハブ皮やハブ骨を使えない未来がやってくるかもしれない。「ハブ製品」の定義を広げて、ハブそのものを使わない商品も増やしたほうがいいと考えたのだという。 「ベジタリアンやヴィーガンという概念が出てくるのなら、ハブ皮が禁止される“Xデー”がやってきてもおかしくないと思いました。そこまで心配しなくてもと言われることもありますが、いまの時代、何がどう転んで自分たちのビジネスに影響するかわかりません。できる対策だけはしておこうと思いました」(長男・武臣さん)
■ステッカーやTシャツ、LINEスタンプも 武臣さんたちは、奄美のハブにまつわる歴史や文化に着想を得た商品、ハブがテーマのコンテンツ商品も「ハブ製品」と定義。ハブを使わない商品の開発を進めた。ステッカーやTシャツ、カードゲーム、コミック、LINEスタンプなどといった広義のハブ製品を続々と生み出している。 「原ハブ屋は少人数のため、商品数を十分に揃えられないのが長年の悩みの種でした。でも、商品コンセプトを設定してハブ製品の定義を広げたことで、外注できる商品が生まれ、ハブそのものを使った革製品やアクセサリーが少ない時期にも棚が寂しいということがなくなった。在庫が復活するまでの時間稼ぎができるようになりました」(長男・武臣さん)