服役も経験した元警察官の名物市長、決して忘れない「獄中での屈辱」 80歳を前に政治活動を再開した理由
1980年代半ばから2000年代初め、和歌山市の名物市長として知られた旅田卓宗さん(79)。2003年に収賄と背任の容疑で逮捕され、服役も経験したが、2023年9月から政治活動を再開し、現在は和歌山市内で連日、辻立ちを行っている。もうすぐ80歳になろうとする中、なぜ再び政治の世界を目指すのか。(ルポライター・片岡健)
●全国の高齢者に伝えたい「人生まだまだこれから」
6月のある日、和歌山市郊外の国道24号の交差点。黄色いTシャツに青いベストを羽織った旅田さんは、黄緑色の派手なのぼり旗を持った支援者の男性と一緒に立っていた。 演説はせず、ただひたすら行き交う車に手を振り、お辞儀している。信号待ち中に車の窓をあけ、声をかけてくれる人もたまにいたが、大半の車は旅田さんの前をただ通り過ぎていくだけだ。このような辻立ちを週6日、午前7時から午後3時まで行っているという。 79歳でこのような活動をするのは体力的に大変そうに思えたが、旅田さんは「おかげさまでまだ僕のことを覚えてくれている人もいます。ありがたいことです」と前向きだ。立候補を予定している具体的な選挙は、口に出すと「事前運動」になるため言えないという。和歌山市長選に出ると「噂」されるが、「『がんばります』とだけ言っておきます」と笑った。 有名な政治家が刑事裁判で実刑判決を受けて服役後、政界復帰した例は過去に色々ある。とはいえ、旅田さんほど高齢でそれを果たせば異例のことだ。その狙いをこう話した。 「全国の高齢者の皆さんに『人生まだまだこれからですよ。むしろこれから頑張りましょう』と伝えたいと思っているんです。それが今回のテーマの1つです」 高齢となった今だからこそ、再び政治活動をする意味があると考えているようだ。
●拘置所では幻覚症状に見舞われ、痙攣して意識を失ったことも
旅田さんの政治家人生は波乱万丈だった。 和歌山工業高校を卒業後、最初は和歌山県警で警察官として働いた。24歳の時に政治家を志して退職。市議や県議を務めたのち、41歳で和歌山市長に初当選した。