服役も経験した元警察官の名物市長、決して忘れない「獄中での屈辱」 80歳を前に政治活動を再開した理由
服役中、刑務官とはうまく付き合えないこともあったが、受刑者たちとの関係は良好だったという。 「全然知らない人がそばにきて、『旅田さんですよね。自分も和歌山なんです。頑張ってください』などと声をかけてくれたりしていました。受刑者仲間はみんな、良くしてくれましたね」 再開した政治活動では、「誰でも一度や二度は失敗する。失敗しても人生はやり直せる」ということも世にアピールしたいという。その考えの背景には服役中の経験もあるようだ。
●「このまま死んでたまるか」という思いで政治活動を再開
服役中は再審で無罪判決を目指す考えもあったそうだ。しかし、出所後に前立腺ガンが発覚し、手術したために断念した。2015年から和歌山市の歓楽街アロチ(新内)のカラオケ喫茶で雇われ店長をしつつ、お客さんの人生相談に乗るようになった。 この間、2023年2月に公民権が回復し、再び立候補が可能になったが、当初は政治活動の再開など考えられなかった。気持ちが変わったのは、昨年(2023年)4月の誕生日で78歳になったのがきっかけだ。 「ぱっと目の前に80歳という年齢が浮かんできて、『もう死ぬ日が来るのを待つだけなのか…』と考えるようになったんです」 鬱々した気分が続く中、衆院の補欠選挙で当選した女性が挨拶に来てくれた。言葉を交わす中、「自分も共感を得られれば、また勝負できるのでは…」という思いが浮かんだ。 「カラオケ喫茶で色んな人の相談にのる中、和歌山は車社会なのにバスの便が少ないため、買い物や病院に行くのにもタクシーを使わざるをえず、大変だと聞いていました。市の人口も減っています。自分が情熱を注いできた街が消滅しかかっている中、『このまま死んでたまるか』という思いがわいてきたんです」 信頼できる人たちに政治活動の再開を相談したところ、誰もが「おもろいんちゃうか」と言ってくれた。「共感は得られる」と思い、再チャレンジを決めた。
●「旅田さんを見て、もう一度頑張ろうと思った」と涙を流した男性も
再開した政治活動では、お金をかけずに戦うこともテーマの1つという。 「政治が金、金、金の世界になっているので、選挙はお金をかけなくても戦えることを示したいんです。ただ、選挙にお金をかけないなら、そのぶん時間をかける必要があるので、立候補まで3年かけて準備しようと考えたんです。『それまで生きているのか』と笑われたりもしましたが」