服役も経験した元警察官の名物市長、決して忘れない「獄中での屈辱」 80歳を前に政治活動を再開した理由
ゴミのポイ捨てを防止する条例を全国に先駆けて始めるなどした先見性や行動力、親しみやすい人柄で人気を博し、政党に頼ることなく通算で4期・13年も市長を務めた。一方、不倫を写真週刊誌に報道されるなどスキャンダルでも全国的な注目を集めた。 古巣の和歌山県警に収賄容疑と背任容疑で逮捕されたのは2003年のことだ。いずれの容疑についても一貫して無実を主張し、最高裁まで争ったが、2010年に懲役4年の実刑判決が確定した。 「今思い出しても、キツネにつままれたような気分です」 そう振り返る逮捕以来、獄中では被疑者、被告人として辛酸をなめさせられた。警察の留置場から拘置所に移送された初日、刑務官に性器や肛門を検査された屈辱は今も忘れられない。拘置所では、収容された部屋もひどい状態だったという。 「布団には寝小便のような跡があるし、畳は腐っていて、虫がはっていた。僕は虫が苦手なので、夜も寝られませんでした」 勾留が続く中、妻や娘の声が聞こえてくる幻覚症状に見舞われた。身体が痙攣し、意識を失ったこともあったという。
●刑務所の中庭に咲いたタンポポに救われた
実刑判決確定後に服役した刑務所では、当初、病棟に収容された受刑者たちの世話をする仕事についた。しかし、足にけがをして、この仕事が満足にできなくなった。 そこで担当刑務官に「足が痛くてもできる仕事に変えてもらえませんか」と相談したところ、「作業を拒否した」とみなされて戒告処分を受けた。弁明などまともに聞いてもらえなかった。その後についた洗濯係の仕事に不満はなかったが、刑務所生活の理不尽さを味わった。 裁判で有罪が確定した罪を服役中も認めなかったため、仮釈放を許されず、満期まで服役した。この間、獄中で受けたガン検査で不安な結果が出たこともあり、死の恐怖を感じた時もあった。そんな中で救いになったのは、刑務所3階のトイレの窓から見えた中庭の景色だった。 「ある朝、中庭一面に黄色いタンポポの花が綺麗に咲いていたのに、夕方には草刈り機で全部刈られていたんです。『花にも命があるのになあ…』と思っていたら、1週間か10日くらい経った時、タンポポがまた中庭でぽつぽつと咲いていた。僕はそれを見て、人間は死んでも生まれ変われるのだと思い、死の恐怖が消えたんです」