シリアで内戦激化の懸念、反体制派が第2の都市アレッポ進攻…背景にヒズボラ弱体化と露軍縮小
【カイロ=西田道成】在英のシリア人権監視団は11月30日、内戦下にあるシリアの反体制派が北部の要衝アレッポに進攻し、市内の大半を制圧したと明らかにした。アレッポはバッシャール・アサド政権が支配していたが、政権軍は30日、一時撤退を表明した。近年こう着状態が続いていた内戦が激化する懸念が高まっている。 【写真】アレッポで銃を掲げ車両で移動する反体制派の兵士
人口約200万人を擁するアレッポはシリア第2の都市。北西部イドリブ県を拠点とする反体制派は27日、アレッポに向けた攻勢を始めた。ロイター通信などによると、政府関係施設や空港などを掌握した。反体制派は、国際テロ組織アル・カーイダ系のイスラム過激派組織「ヌスラ戦線」が前身の「シャーム解放機構」が率いる。
シリア人権監視団は12月1日、一連の戦闘で民間人を含む370人以上が死亡したと明らかにした。
政権軍は11月30日、「近く全地域を奪還するための反撃を始める」とSNSで声明を出した。アサド大統領はこの日、アラブ首長国連邦(UAE)の大統領と電話会談し、「シリアにはテロリストを倒す力がある」と強調した。
軍事的優位を保っていたアサド政権が反体制派の進攻を許した背景には、政権を支援してきたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの勢力低下がある。アサド政権を支えるロシアもウクライナ侵略に注力し存在感が低下したところを狙われた可能性がある。
シリアでは2011年、中東の民主化運動「アラブの春」から波及した反政府デモをアサド政権が弾圧したのを機に内戦が始まった。アレッポは反体制派の拠点だったが、16年にアサド政権が奪還すると、反体制派をイドリブ県に追い込み、軍事的優位を確立した。20年にロシアと、反体制派を支援するトルコが停戦に合意して以降、大規模な交戦はなかった。
一方、ヒズボラは今年9月以降、イスラエル軍の激しい攻撃で幹部が相次いで殺害されるなど弱体化した。レバノンでの停戦が発効した11月27日、シリアで反体制派が反攻を始めた。