認知症予防へ神戸大と研究継続 「百歳体操」に新プログラム 40歳代以上対象教室も/兵庫・丹波市
国内で初めて、頭を使いながら体を動かす運動(二重課題運動)を定期的、継続的に行うことで認知機能が向上し、認知症を遅らせる可能性があることを、兵庫県丹波市との共同研究「J―MINT PRIME Tamba」で突き止め、学術論文で世界に発信した神戸大学認知症予防推進センター(古和久朋センター長)が、同市で新たな共同研究を始める。研究成果を社会実装するため、頭を使いながら体を動かすミニ認知機能プログラムを「いきいき百歳体操」に追加するほか、より若い40歳以上の生活習慣病の人らを対象にオンラインで「『運動』×『脳トレ』教室」を開く。さらに、最初の共同研究に協力した203人の「その後」を追跡する。同市柏原町内にセンターのサテライト事務所を構え、国内で唯一、エビデンス(根拠)を出した同市でさらなる認知機能の向上、発症予防で成果を上げることを目指す。 共同研究の成果が認められ、日本医療研究開発機構(AMED)から予防健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業、エビデンス構築促進事業に採択された。 「脳ぴかエクササイズ」と名付けた「百歳体操」の追加プログラムは、約20分間、DVDに合わせて運動する。市内59の同体操グループが研究参加に手を挙げた。二重課題運動を3―4分、座ってする有酸素運動と立ってする同運動をそれぞれ5―6分、最後に再び二重課題運動を3―4分、の構成。DVDは6巻あり、難易度や負荷量が異なる運動を計24種収録、飽きないように工夫している。「百歳体操」の後に取り組む。 今月開始の前半グループと、来年9月からの後半グループの2群にランダムに分け、運動効果を見る。現在、参加グループを巡回し、一人ひとりの「運動開始前データ」を取っている。タブレットを用いて脳年齢や集中力、記憶力を測定し、脳の状態を把握。握力、歩くスピード、片足立ちなど、体の状態も計測した。一定期間の後、再計測し、「開始前データ」と比較し、効果を調べる。同センターは全体で500人の研究参加を望んでいる。 10月4日から毎週金曜午前10―11時半に市内公共施設で開くオンライン教室の対象は40―74歳で、介護保険前の若い世代も含めた研究。糖尿病や高血圧などの生活習慣病は認知症の危険因子で、早期に二重課題運動や有酸素運動、栄養指導などの介入により生活習慣の改善につなげ、認知機能の維持や発症予防につながるか否かなどを検証する。教室開講前に個々の脳の健康チェック、筋力などの簡単な身体機能を測定し、事後の評価資料とする。 「耐糖能異常(HbA1c5・6%以上)」「血圧高値(収縮期130mmHg以上/拡張期85mmHg以上)」(糖尿病、高血圧で治療中の人を含む)、体の衰えを感じる人が対象で、10日まで申し込みを募っている。受講無料(1年間)。60分間の運動と、栄養講義や脳トレ。申し込んだ人に同センターから説明がある。20日(午前10―11時)と27日(午後2―3時)のいずれかを受講する。 平日参加しづらい人のために、来年1月から、毎週土曜午前10―11時半、同内容のオンライン教室を開く。 J―MINTの追跡は、研究が始まった2020年10月から48カ月後の今秋と、60カ月後の来秋に実施する。頭と体の健康チェックという形で、脳の機能と運動機能を評価する。共同研究参加者は、18カ月の研究期間終了後に自主グループで二重課題運動や有酸素運動を継続している人、終了をもって運動を止めた人などがあり、運動を継続している集団の効果も検証する。共同研究参加者には、「健康だより」を2カ月に1度郵送している。