トランプ氏は金融政策への発言権を主張:トランプ再選でFRBの独立性が脅かされドル安進行のリスク
トランプ氏は「金融政策決定に大統領が発言権を持つべきだ」と公言
トランプ氏は8日に開いた記者会見で、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定に、大統領が発言権を持つべきだと述べた。トランプ氏がFRBの金融政策に介入し、その独立性を低下させる考えがあることを、今までで最も強く表する発言となった。 トランプ氏が再選されれば、景気が軟調な局面では、政治的な圧力によってFRBが利下げを促される可能性が高まる。これは通貨の信認を低下させ、為替市場でドル安を後押しすることになるだろう。足もとで急速な円高・株安の連鎖に見舞われた日本にとっても、これは大きな懸念材料だ。 トランプ氏は、「大統領は少なくとも発言権を持つべきだと思う」とし、「私の場合、大金を稼ぎ、大成功を収めた。多くの場合においてFRB当局者や議長になるような人物よりも優れた直感を持っている」と豪語した。 トランプ氏は、「彼(パウエル議長)とは非常に激しく闘った」などとも述べた。パウエル議長は2026年に任期が切れるが、トランプ氏は任期切れ前にパウエル議長を解任はしないが、2026年に再任をしない考えを明らかにしている。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4月に、トランプ氏の側近らが、同氏が大統領選で再選された場合、同氏が望んでいるFRBの独立性を弱め、金融政策決定において大統領の権限を強める改革案を策定している、と報じていた(コラム「もしトラでFRBの独立性が大きく脅かされるリスクが浮上:中央銀行の独立は人類の英知の産物」、2024年5月1日)。 トランプ氏は、今までこの報道について言及してこなかったが、今回の発言で、これがトランプ氏の意向を受けた動きであったことが確認されたと言えるだろう。
トランプ氏の側近はFRBの独立性を弱める改革案を策定
改革のポイントは、大統領にFRB議長の解任権を付与すること、金融政策決定に大統領が影響力を行使できるような仕組みを作ること、の2点だ。 FRBの改革案の策定を進めるトランプ前大統領の側近らは、「金利に関する判断に関してFRBは大統領と協議が行われるべき」と主張している。改革案の中では、FRB関連の規制をホワイトハウスによる評価の対象に加えること、また中銀のチェック機関として財務省をより積極的に活用すること、も提言されているという。 さらに、FRB議長は金利政策について大統領の見解を定期的に求めた上で、それを米連邦公開市場委員会(FOMC)の議論に反映させることや、大統領がFRBの臨時理事としてFOMCに加わることもあり得る、との議論もされているという。