ルノー カングー ビボップはとんでもなく独創的だった【10年ひと昔の新車】
開放感たっぷりの室内。直進安定性、乗り心地は上々
カングー ビボップの真骨頂はここからだ。左右独立式のリアシートはフロントシートよりも92mm高い位置に据えられているので見晴らしがよく、前後スライドするだけでなく折り畳みも可能。使わない時は取り外すこともできるので、用途に応じて荷室を自由にアレンジすることができる。荷室容量はリアシート装着時で174L、リアシートを取り外すと1462Lまで拡大する。 さらに、リアグラスルーフを前方に跳ね上げてボディ後部をピックアップのようにオープンにすることができる。しかもテールゲートグラスもセンターコンソール上のボタンでワンタッチで開閉できる。あえてバックドアを片開きのスイングドアとしたのは、ここに理由があったわけだ。もちろん、リアグラスルーフとテールゲートグラスを全開にして走行することもできる。 ルーフのガラスエリアはこれだけではなく、前席上部には左右2枚の手動ポップアップ式グラス、センターには固定式ガラスも備わるので、ルーフはほぼ全面がガラスといった状態だ。なお、これらのグラスルーフには紫外線を95%以上、赤外線を85%以上カットするガラスが使われている。 すべての乗員が空間と光を楽しむというアイデアはユニーク。人生を楽しむためのフランス流の考え方なのだろう。フリードスパイクなどに見られる日本流のスペースユーティリティの考え方との違いは興味深い。 パワートレーンはカングー譲りのもの。搭載エンジンは最高出力105ps、最大トルク148Nmを発揮する1.6L直4。ことさらパワフルではないが、車両重量がカングーよりも50㎏軽く、また5速MTを採用することもあって、それほどもどかしく感じることはない。(4速ATの設定はない)おっとりした乗り味は、ややアップライト気味で座り心地抜群のシートともよく合っている。 「おっとり」といっても、その走りが面白くないというわけではなく、直進安定性は非常に高く、路面凹凸のいなしも巧みで、乗り心地は上々。100km/h走行時、5速で3200rpmとややローギアということもあって、あまりスピードを上げる気にはならないが、一度巡航速度に乗せてしまえば快適そのもの。背高ボディということもあり、ワインディングには向かないと思っていたが、意外に低い重心やショートホイールベースもあって、リズミカルにコーナーをクリアしていったことも付け加えておこう。 カングー ビボップは、新しくなったカングーでは少し大き過ぎるというユーザーのために導入されたもので、「カングーほどは売れないでしょう」とルノー・ジャポンでは予想しているようだが、意外やカングーに迫る人気モデルになりそうな予感もある。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)
ルノー カングー ビボップ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3870×1830×1840mm ●ホイールベース:2310mm ●荷室容量:174~1462L ●車両重量:1370kg ●エンジン:直4DOHC ●排気量:1598cc ●最高出力:78kW(105ps)/5750rpm ●最大トルク:148Nm(15.1kgm)/3750rpm ●トランスミッション:5速MT ●駆動方式:FF ●車両価格:234万8000円(2010年当時)
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