夏に飲みたい爽やかな白ワイン! オーストリアの「ドメーヌ・ヴァッハウ」に注目。
世界で最も美しく、複雑なテロワールを持つ産地のひとつ。
オーストリアは東に位置するパノニア平原から流れ込む暖かい空気の影響と、西に位置するアルプス山脈からの冷涼な気候が影響する、ブルゴーニュより北に位置する冷涼な大陸性気候の産地だ。東西20キロにわたって流れるドナウ川流域のヴァッハウのブドウ産地も同じように影響を受けている。すなわち、東に位置する畑は温暖な気候で、西に行くほど冷涼な気候に影響されることになる。さらに川へ向かって両岸に斜面が広がるため、平坦な畑と急斜面の畑が存在し、それぞれに異なる複雑なテロワールを持っている。 冷涼であればあるほど、ブドウは枝に実っている時間(=ハンギングタイム)が長くなり、香気成分と酸を蓄えることができる。それにより、ワインはキリッとした酸味と、芳しい花のような芳香を纏い、夏にこそ味わいたいエレガントでフレッシュな味わいを得るのだ。
品質を厳格に規定する、ヴァッハウ独自の3段階の規格。
ヴァッハウのもうひとつの特徴として、産地による独自の品質規格があることが挙げられる。KMWと呼ばれる糖度の基準に応じて「シュタインフェーダー(現地で消費される軽いタイプのワイン)」「フェーダーシュピール(基本となるエレガントなワイン)」「スマラクト(最上級ワイン)」の3段階に分けられている。 「フェーダーシュピールはミディアムボディでエレガント、若々しい味わいが心地よいです。スマラクトは若いうちからも楽しめますが、より濃縮感がありしっかりしたボディが特徴。10年~20年のエイジングも期待できます」と、ホーヴァースはにこやかに笑う。 オーストリアで育てられるワインのうち70%が白ワイン品種であり、ドメーヌ・ヴァッハウでは生産量の95%を白ワインが占める。その中でも特徴的なのが、オーストリアを代表するグリューナー・ヴェルトリーナーと、冷涼地でしか本領を発揮できないリースリングだ。
グリューナー・ヴェルトリーナーはエレガントでフレッシュな酸が魅力的な品種。青リンゴや洋梨のようなフルーティさを持ちつつ、ブドウを圧搾した後、スキンコンタクト(果皮とワインを接触させること)によって皮からの成分を抽出させ、ドライハーブやジンジャーのようなニュアンスが漂う。 「テラッセン」とは急斜面に位置する畑で採れたブドウを使用したもの。斜面にある畑はブドウの収量が少ない上にブドウの房、実が小さく、水分量が少なくなる傾向にある。それにより香りの成分や味わいが濃縮した、品質の良いブドウが収穫できるのだ。 リースリングはドイツ発祥、冷涼産地を代表する白ワイン品種。白い花の香りにレモン、ライムのような酸味が特徴で、ヴァッハウのテロワールからはさらに白桃やアプリコットのような、優しい甘やかさを持つフルーツの要素が加わる。