危険運転の適用に道開く「実質的危険」とは 大分194キロ事故判決、大きな先例となるか
大分市の一般道で令和3年、時速194キロの車が起こした死亡事故で、大分地裁は11月28日の判決で、危険運転致死罪の成立を認めた。過去の裁判では、猛スピードでも進路の逸脱がない場合、危険運転には当たらないとされてきたが、大分地裁はこれを覆し、ハードルが高すぎると批判されてきた同罪の適用に新たな視点を提供した。高速度事故を巡り、今後同様の司法判断が広がるか注目される。 【イラストで解説】事故状況のイメージ ■「制御困難」の意義 裁判での主要な争点は被告の元少年(23)=事故当時(19)=の運転が、同罪の要件である「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に該当するか否かだった。 猛スピードだったとはいえ、被告の車は直線道路をそれることなく進み、右折車と衝突。このため弁護側は「車線に沿って直進できていた」として制御困難にはあたらないと主張し、過失致死罪にとどまると訴えた。 過去の裁判で、同じく進路逸脱の有無が焦点となったのが、津市の直線道路で平成30年、時速146キロの車がタクシーに衝突して5人が死傷した事故だ。 名古屋高裁は令和3年、制御困難とは「自車を進路から逸脱させたことを意味する」と判示。事故を起こした車が進路を逸脱していなかったことを理由に、1審に続いて危険運転致死傷罪ではなく過失致死傷罪を適用していた。 ■進路逸脱なしでも可 これに対し今回の大分地裁判決は、制御困難の意義について、ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで進路を逸脱して事故を起こす「実質的危険性」がある高速度での走行を指すとし、実際に逸脱がない場合も、制御困難に含まれるとの判断を示した。 そのうえで、現場道路は15年以上改修舗装されておらず「わだち割れ」(路面の凹凸)が生じていた▽一般に速度が速くなれば揺れが大きくなり、ハンドル操作の回数も増えるところ、被告は法定速度の3倍以上の高速度で走行した▽夜間運転は視力低下や視野狭窄(きょうさく)を招くが、事故の時間は夜間で、付近も暗かった-といった事情を挙げ、実質的危険性を認めた。 弁護側は過去にも一般道を170~180キロで複数回走り「操作に支障が生じたことはなかった」とも訴えたが、実際に進路逸脱がなくても、実質的危険性が認められれば制御困難にあたるとし、過去の「結果」は「評価を左右しない」と重視しなかった。