千葉ジェッツを強豪チームたらしめた池内勇太GMの理知と情熱(前編)「ジェッツファミリーに活力を届けることが最優先事項」
渡邊雄太獲得に至るアプローチ
──ららアリーナ 東京ベイが開業した今シーズンは、さらに飛躍のシーズンとなりそうですね。 はい、クラブにとってとても大事な1年になると思っています。アリーナ建設の話が出始めたころからここのタイミングで良いチームを作り上げることを目指してきて、オールスターの開催が決定して、何のご縁か渡邊雄太がジェッツに加わってくれた。なんと言いますか、描いたようなストーリーの中にいる感覚ですね。いろいろなドラマの点と点が繋がってここまで来たな、と。しっかり結果を出さなければいけないというプレッシャーもありますが、ブースター皆さんたちとも一致団結して、最高の1年にしたいです。 ──『渡邊雄太争奪戦』はバスケットボールファンの今オフ最大の関心事となりました。彼を射止められた決め手は何だったと思いますか? そうですね…とにかく思いや熱量はしっかりと伝えました。彼がメンタル面で苦しんでいるということに関しても、思っていることをそのままストレートに伝えました。サポートしたいし、ジェッツにはこういうメンバーがいて、本当に楽しくバスケをやっている。渡邊選手とも一緒に楽しくバスケットをしたい。そういうことを伝えるための、ワクワクするようなプレゼンはできたと思います。アメリカで孤独と戦いながら努力していたのを理解していたので仮にジェッツに加入しなくても、彼には本当に心の底からバスケットを楽しんでほしいなって思いながら話したことを記憶しています。そんな中で、押しの一手は、彼と仲の良い富樫勇樹でした。ジャイアンツのV9を引き合いに出して「勇樹と雄太の2人がいたら、それを超えるような、日本のプロスポーツ界史上最高の偉業を目指せる。そんな景色を見に行きませんか?」というようなことを話させてもらいましたね。 ──オファーを受けてくれることが決まったときは、どのような思いでしたか? あまり実感が沸かなかったというのが正直なところです。当たり前ですけどNBAでプレーしているイメージが強いから、練習場でジェッツの練習着を来ている彼を見ていてもなんだか違和感があって、本人に「似合いますか?」と聞かれたときも「ま、まあまあかな」みたいな返事をしました(笑)。加入会見をしてようやく「ジェッツに入るんだな」と実感しました。 ──涙を流されたり、ガッツポーズされたり、とにかく大きな喜びがあったと想像していたので、意外でした。 もちろん嬉しかったですし、自分の中では喜んでいたつもりですが、代理人との交渉がかなり長引いて、公になるギリギリまでどうなるかわからなかったこともあったので、とにかく現実味がなかったですね。いろいろな方が「すごいね」と言って、驚いたり喜んでくださるんですけど、自分はみなさんと同じ温度感でいられていないと言いますか、彼に対してのリスペクトも相まって、とても冷静に「本当にあのNBA選手がウチに来てくれるのか」ってずっと思っていました。自分でプレゼンしておいて何なんだって感じですけど(笑)。【後編に続く】
青木美帆