建築家と住み手のミスマッチを防ぐ!若き建築家夫妻が立ち上げたマンションリノベブランドが話題。「日本の美」に心惹かれる空間
小大建築設計事務所を主宰し、東京と上海の2カ国に事務所を構える小嶋伸也さんと綾香さん。店舗や宿泊施設を設計する一方で、2021年にはマンションのリノベーションブランド「一畳十間(いちじょうとうま)」を設立しました。 【写真で見る】リノベーションをブランド化するメリットとは?空間の特徴も解説! なぜ建築家が自らブランドを立ち上げるに至ったのでしょうか。そこには、セルフブランディングによって家づくりのプロセスを住み手にわかりやすく伝え、建築家の存在を身近なものにしたいという思いが込められていました。
建築家が自らリノベーションブランドを立ち上げる。その経緯とは
都心のマンションの一室、玄関扉を開くと出迎えてくれたのは和室でした。 土間は玉石の洗い出しで仕上げられ、和室は小上がりのように腰掛けられる。奥のダイニングキッチンまで見通すことができ、ワンルームのなかにさまざまな居場所が点在しながら緩やかにつながっています。 ここは、建築家夫妻の小嶋伸也さん、綾香さんの自邸です。 伸也さんが以前勤めていた隈研吾建築都市設計事務所で中国のプロジェクトを多く担当していたことから、独立後に東京だけでなく上海にも事務所を構えたのは自然な流れだったといいます。そしてさらに、2021年にはリノベーションブランド「一畳十間」を設立しました。 そのきっかけは、上海から車で4時間ほどの限界集落に宿泊施設を設計したことにあります。 「土や竹、岩など地元の素材を使って職人たちの手で仕上げ、簡素ですが、とても気持ちのいい空間をつくることができました。これで十分足りるんだと気づいたんです。日本は建材メーカーが多く、カタログから建材を選びがちですが、左官など日本にも手仕事を感じられるものはまだまだ残っている。そのよさを空間を通じて伝えていけたらと思いました」と伸也さん。
第一号は自邸。コンセプトとメッセージを託した空間
家族で住んでいた築50年、約90㎡、3LDKのマンションの一室をリノベーションし、ブランドコンセプトを固めてきました。 「一畳十間」というブランド名は、「一つの空間(畳)でも十分足りる、十通りもの居心地のよい場所(間)をつくる」という思いから名付けられたもの。○LDKという間取りに人が合わせるのではなく、暮らしに合わせて居場所をつくる発想です。 日本家屋の知恵にヒントを得て、ワンルームを基本とし、障子や襖ふすまで必要に応じて仕切る間取りをコンセプトに掲げました。 和の要素を取り入れたのは、日本の慎ましやかで豊かな暮らしを子供たちにも感じてほしいと考えたからだと綾香さんはいいます。 「襖なら静かに開け閉めし、相手に配慮することを学びます。日本が昔から大切にしてきた文化や美意識を暮らしのなかで感じてもらえたらうれしいです」。