夢破れたパリ五輪を現地観戦 心に残ったモヤモヤ…どん底から描く次の夢
ビーチバレーボール男子の国内第一人者、高橋巧(ANAあきんど)が2026年夏季アジア大会(愛知県と名古屋市の共催)でのメダル獲得を目指して再始動した。 ■義妹は元久光のリベロ、高橋巧のバレーボール歴 パリ五輪の出場権を懸けた6月のアジア予選「コンチネンタルカップアジア大陸予選第3フェーズ」で敗退。22年夏から福岡市を練習拠点に活動していることから「博多のミスタービーチバレー」と呼ばれる32歳は、進退に悩みながらも師の言葉や後進の熱いまなざしをエネルギーに変え、一歩を踏み出した。 波光きらめく博多湾からの潮風をほおに受け、高橋は台風の影響でビーチに漂着したごみの回収に汗を流した。9月上旬に行った清掃活動。所属するANAあきんどの福岡支店の社員も協力を惜しまなかった。 「休日にもかかわらず、手伝ってくれました。ありがたいことです」。きれいになった砂浜では、うれしい「再会」もあった。以前、講習会で指導したことがある長崎の高校生だった。聞けば普段の練習場が使えず、福岡までやって来たという。「良かったら、どうぞ」。高橋が確保していたネット付きのコートを提供すると、高校生たちの顔に笑みが広がった。「元気をもらっているのは僕の方かも」。はつらつとした表情でボールを追う姿を高橋はまぶしそうに眺めていた。 高橋は1996年アトランタ五輪代表の高尾和行さん(57)に師事してレベルアップを図るため、2022年に関東から福岡へ拠点を移した。23年は国内最高峰の「マイナビ・ジャパンツアー」で10戦7勝の好成績を収めた。日の丸を背負い、杭州アジア大会にも出場。周囲の期待は高まり、自身もリオデジャネイロ、東京に続く3度目の五輪挑戦に手ごたえを感じていた。「今度こそ」との決意で6月のアジア予選に臨みながら、五輪切符をつかみとることはできなかった。 「イランのチームに敗れました。いいニュースを届けることで恩返しをしたかったんですが、支えてくれた人たちに合わせる顔がなく、申し訳ない気持ちでいっぱいで…」。アジア予選には男女の日本代表が2組ずつ出場した。夢破れた男子に対し、女子は長谷川暁子(NTTコムウェア)石井美樹(湘南RIGASSOク)組が突破。日本勢で唯一出場したパリでは20年ぶりに勝利(不戦勝を除く)を挙げ、1次リーグができた04年アテネ五輪以降で初めて決勝トーナメントに進出する快挙を果たした。 そのパリ五輪を高橋は現地に足を運び、観戦した。ずっと目指してきた場所を自分の目で見て、肌で感じてみたかった。「次へ踏み出すための、きっかけが欲しかったんです。エッフェル塔の下に設けられた会場に何千人という観客が集まっていました。DJの演出やイルミネーション…何から何まで特別な大会なんだと、鳥肌が立ちました」。別世界のような光景を感じながら、高橋はあらためて五輪のコートに立つ資格があったのか、自らの胸に問い直した。逆境をはね返すメンタルの強さ、ペアとのコミュニケーション、人としてのキャパシティー…。「どこか一つでも欠けていたら、瞬く間に失点してしまいます。あの場に立つためには全てをつくりあげていかないといけない」(西口憲一) ■浴びせられた厳しい言葉「今のプレーからは伝わってくるものがない」…【関連記事】から
西日本新聞社