大惨事を招くプロジェクトの「決定的な特徴」…組織が理解しなければならないたった一つのこと
大小かかわらず、官民問わず、さまざまなプロジェクトが進行する中で、「予算内、期限内、とてつもない便益」という3拍子を揃えられるのは0.5%に過ぎない。 【写真】「仕事速いね!」と言われる人が意識している、たった3つのコツ 失敗するプロジェクトと成功するプロジェクトの決定的な違いの一つに期間の長さがある。 世界中のプロジェクトの「成否データ」を1万件以上蓄積・研究するオックスフォード大学教授が、予算内、期限内で「頭の中のモヤ」を成果に結びつける戦略と戦術を解き明かした『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか? 』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
想定外が「予想通り」起きる
ナシーム・ニコラス・タレブはよく知られているように、めったに起こらないが、起これば甚大な影響をおよぼす事象を「ブラックスワン」と呼んだ。破滅的結果に終わるプロジェクトは、関係者のキャリアを破壊し、会社を破綻させるといった、さまざまな悪影響をおよぼすことがある。こうしたプロジェクトは間違いなくブラックスワンに相当する。 ブラックスワン的結果が小売大手Kマートに与えた影響を考えてみよう。 Kマートは2000年、ウォルマートとターゲットからの競争圧力に対抗するために、2つの大型ITプロジェクトに着手したが、コストがかさみ、それが直接の引き金となって2002年に破産申請した。また、別のITプロジェクトの大失敗が、世界的なジーンズメーカー、リーバイ・ストラウスに与えた影響はどうだろう? プロジェクトの当初予算は500万ドルだったが、損失は2億ドルに膨らみ、CIOは追放された。
小規模プロジェクトも例外ではない
さらにひどい目に遭った企業幹部もいる。サウスカロライナ州の原子力発電所建設プロジェクトでは、トラブルにより工期に大幅な遅れが生じた。担当した建設会社のCEOは、司法省の2021年のプレスリリースによれば、「プロジェクトを継続させるために」当局から情報を隠蔽したとして、連邦刑務所での2年の懲役と520万ドルの罰金を科された。 このようにブラックスワン的結果は、プロジェクトにも、それを率いる人たちにも重大な影響を与える。 企業幹部や政府高官ではない人や、ごく小規模なプロジェクトを運営する人は、こういう話を聞いても、「自分には当てはまらない」と思いたくなるかもしれない。 ◼️正規分布で収まらない だがそう思ってはいけない。私のデータによれば、小型プロジェクトもファットテール〔正規分布ではなく、極端な外れ値がずっと多く裾の厚い確率分布〕を免れない。また、自然物であれ人工物であれ、複雑系〔各構成要素が相互に作用し合い、全体として機能するシステム〕の内部では、正規分布よりファットテール分布のほうが典型的だ。そして私たちの住環境や労働環境は、ますます複雑性と相互依存性を増している。 都市は複雑系だ。市場も複雑系だ。エネルギーの生産・流通もそうだ。製造、輸送、金融、ウイルス、気候変動、グローバリゼーション等々、挙げればキリがない。もしあなたのプロジェクトが野心的で、多くの人や要素が関わっているなら、それは間違いなく複雑系に組み込まれている。 この特徴はあらゆる規模とタイプのプロジェクトに当てはまり、個人の住宅リフォームもけっして例外ではない。 数年前のこと、イギリス・BBCの歴史的建造物の改修に関する番組で、あるロンドンの夫婦が取り上げられた。夫婦は田舎の古民家を購入し、業者から全面リフォームの見積もりを取ったところ26万ドルと言われ、その金額で契約を結んだ。