『2度目のはなればなれ』オリバー・パーカー監督 キャラクターが生きている、名優2人の演技【Director’s Interview Vol.442】
2度のオスカー受賞を誇る名優、マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソン。50年ぶり2度目の共演となった本作では、人生最期の日々を寄り添い生きる夫婦役を好演。マイケルは本作が引退作となり、グレンダは映画公開直前にこの世を去った。そんな名優2人の最後の演技を捉えたオリバー・パーカー監督は、いかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。 『2度目のはなればなれ』あらすじ 2014年夏。イギリス・ブライトンの老人ホームで寄り添いながら人生最期の日々を過ごす老夫婦バーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)のある行動が世界中の大ニュースとなった。バーナードはひとりフランスのノルマンディへ旅立つ。彼が行方不明になったという警察のツイート(The Great Escaper)をきっかけに、世界中で話題になったのだ。ふたりが離れ離れになるのは、人生で2度目。決して離れないと誓った男がどうしてもはなればなれにならなければならなかった理由とは…。必ず戻ってくると信じる妻の真実の想いとは…。
記憶が持つ力
Q:バーナード(バーニー)の旅と並行して、レネのエピソードがしっかりと描かれるのも印象的でした。意図したものがあれば教えてください。 パーカー:私が興味を持っていたのは「記憶が持つ力」についてです。バーニーとレネはそれに対して全く違うアプローチをとっていました。バーニーは過去の辛い思い出を抑圧していますが、どんなに抑えようとしても出て来てしまう。一方でレネの場合は、自分の死期を感じていることもあり、記憶を喚起して整理しようとしている。この2人の記憶が対になると、一体どんなふうに見えるのだろうか。そこを考えながら作りました。 Q:若い頃の戦争経験によるトラウマ、そして今抱えている老いと死期。それらのテーマが散漫になることなく見事に融合していました。 パーカー:この物語に二つの意図を組み込むことができたのは、脚本家のウィリアムのおかげです。脚本を読んでワクワクしたのはまさにそこでした。「戦争のトラウマ」と「老いと死期」は必ずしも相性が良いエピソードではない。描くにあたりそこは難しかったですね。 バーニーとレネは、それぞれ自分の魂を見つめ真実を模索しますが、最終的には2人ともお互いにたどり着く。それはつまり“つながる”ことであり、この映画の中心にある力強いエネルギーです。この老夫婦がつながるだけではなく、かつて敵であったドイツ人とつながる。同じ英国の階級が違う元軍人とつながる。ケアをしてくれる介護士とつながる。これら全てのつながりは、ひとつのフィーリングなんです。
【関連記事】
- 『悪魔と夜ふかし』コリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ監督 こだわった70年代の世界観【Director’s Interview Vol.439】
- 『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】
- 『西湖畔に生きる』グー・シャオガン監督 伝統と現代を追求する「山水映画」があばく人間の欲望 【Director’s Interview Vol.436】
- 『画家ボナール ピエールとマルト』ヴァンサン・マケーニュ 監督のビジョンに身を捧げる【Actor’s Interview Vol.43】
- 『SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース』マルグレート・オリン監督 5番目の季節を撮る理由【Director’s Interview Vol.434】