兵庫県知事選“SNS疑惑”に見る「炎上後の報道対応」の難しさ PR会社社長が「沈黙」続けるのは“悪手”か?
炎上後、沈黙を続けるメリットは…
こうした炎上騒動に巻き込まれた場合、無言を貫くのは“悪手”なのだろうか。 杉山弁護士は、「ケース・バイ・ケース」とした上で、次のように説明する。 「一般的には、早急にポジションを表明、前提となる事実自体にかなりの争いがあることを明らかにして、特にテレビメディアが静観するような流れを作ると、沈静化しやすくはあります」 なお、当事者が丁寧な説明と謝罪をすることについては、炎上鎮火に功を奏することはあまり期待できないという。 「まず、一番影響力の高いテレビメディアは、しばしば人の言葉を、テロップ1文の抜粋だけで報道するケースがあります。国会報道などもだいたいそうですよね。 企業などが炎上した際の報道対応とそれを受けたSNSの反応を見ていると、Xの140文字どころか、20文字も理解できない人たちの発信力が強いために、強弁して否定すると矛盾点などを指摘するでもなく引き下がり、逆に丁寧に説明して理解を求めると居丈高に攻撃して良いのだと認識される傾向があるように感じます。 もちろん、そうでない人たちがいるのもたしかです。しかし、社会として非常に不健全ではありますが、大勢は、話者の雰囲気や背後にある力だけで態度を決めているところがあります」(同前) 本件に照らすと、「社長がダメージを負うことは避けられないだろう」と杉山弁護士は指摘する。 「すでに、クリティカルな内容を世間に公表してしまっていますから、そこを認めて自分があくまで仕事として従たる立場で動いたと主張するのであれば、社長の情状酌量を願ってくれる人たちが出てくるかもしれません。しかし同時に、依頼者との関係における法的責任や、公職選挙法・政治資金規正法に絡んだ刑事事件としてのリスクも強まるでしょう。 それでは沈黙を続けていたら、何らかのメリットがあるのか、これまでの仕事や環境が維持できるのかというと、そこも微妙だと思います」 20日、読売新聞はオンライン記事で〈告示前の10月上旬、斎藤陣営の広報担当者から「SNS監修はPR会社にお願いする形になりました」とのメッセージが支援者の一人に送られていたことが関係者への取材でわかった〉と報道した。斎藤氏はこれまで、PR会社によるSNS監修を否定している。騒動はまだまだ続きそうだ。
弁護士JP編集部