「のどが渇く」「尿が増える」のは「糖尿病」のサイン? 糖尿病の初期症状を医師に聞く
糖分を上手く利用できていないことによる症状
編集部: 続いて、「糖分を上手く利用できていないことによる症状」について教えてください。 中尾先生: 血液中の糖分を充分に使えていないことによる症状として代表的なのは「体重減少」です。先ほど解説した通り、血液中の糖分は筋肉や脂肪を大きくするための材料としても使われます。つまり、インスリンのはたらきが悪くなって糖分が上手く利用できず、筋肉や脂肪を維持することすら難しくなってしまった場合には、体重が落ちていくわけです。病院を受診された患者さんの中には、「体重が落ちたから良いことなのかと思っていました」とおっしゃる方もいますが、一種の飢餓状態に近い体重減少であって、決して健康的に痩せているわけではありません。 編集部: 糖尿病によって起こる体重減少には、どのような特徴がありますか? 中尾先生: 糖尿病でよく見られる体重減少の特徴としては、普段の食事・運動などの生活は何も変えていないにもかかわらず、体重が急激に落ちていくことです。ただし、こうした体重減少自体は糖尿病のみにみられるものではなく、甲状腺の病気やがんなどでも起こり得ます。いずれにせよ、思い当たる節のない体重減少がある場合には、病院を受診することをお勧めします。ほかにも、血液中の糖分を上手く利用できないことで、エネルギー不足のため倦怠感(だるさ)・空腹感を感じることもあります。
症状がなくても放置は厳禁!
編集部: 「糖尿病の放置は危険」とよく聞きます。なぜ危険なのでしょうか? 中尾先生: 最初にお伝えした通り、糖尿病を発症して多少血糖値が上がったとしても、自覚症状はないことがほとんどです。ふだん健康診断を受けていない方であれば、「別の症状のために病院を受診して血液検査を受けた結果、偶然発覚した」というケースも多くなっています。このような場合、「いつ発症したのかも分からず、かなりの高血糖状態で、合併症もかなり進んでしまっていた」なんていうことも決して珍しくありません。 編集部: なるほど。糖尿病を早期発見するために重要なことを教えてください。 中尾先生: 糖尿病をはじめとした自覚症状があらわれにくい病気は、ちゃんと病院の検査で調べない限り診断が遅れがちです。診断・治療が遅れると、その間にも合併症が進行してしまいます。糖尿病を早期に診断するためには、健康診断を定期的に受診することが非常に重要です。仮に健康診断を受けていても、「要受診」の判定であるにもかかわらず、「特に症状がなかったので……」と病院を受診されない方もいらっしゃいますが、血糖値が高い限り症状がなくても合併症はじわじわと進行してしまいます。 編集部: 最後に読者へメッセージをお願いします。 中尾先生: この記事を通して、みなさんにお伝えしたいのは ①症状がなくても健康診断は必ず定期的に受診すること ②健康診断で引っかかったら絶対に放置しないこと の二点です。もちろん、症状が出にくいことは決して悪いことばかりではありません。自覚症状が出やすいような病気を患うと、生活を送る上で大きな支障になりますよね。糖尿病は症状に乏しいからこそ、早期から良い血糖値を維持して合併症を進めさせなければ、生涯にわたって健康な方と大きく変わらない生活を送れるわけです。糖尿病は誰にでも起こりうる病気です。だからこそ、必ず定期的に健康診断を受けるようにしましょう。