【このままでは太陽光パネルの二の舞に】EV覇権を狙う中国の大戦略、もう「安かろう悪かろう」ではないその実態とは?
EVへの補助金で覇権を狙う中国
中国は、世界の自動車生産台数の3分の1を持つ自動車生産国になった(表)。中国政府は自動車の電動化を進めている。その理由は、大気汚染対策、石油輸入量の抑制と言われるが、最大の目的は、将来の脱炭素社会で世界の主導権を握ることだ。 太陽光パネル製造では、政府補助をつぎ込み供給過剰と価格競争を作り出し、世界市場に中国製パネルを溢れさせた。日本製、ドイツ製パネルは市場から駆逐された。風力発電設備でも、EVでも同様のことを行い世界の覇権を握る戦略だ。 中国政府は多様な形で、消費者あるいは自動車メーカーに補助金を支出している。米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が、補助金額の分析を行っている。 中国政府の補助金は、EV購入時の消費者への支援、消費税の免除、充電ポイント拡充のインフレ整備への支援、メーカへの研究開発支援、政府によるEV購入から成り立っており、09年から23年までの累計額は2308億ドル、30兆円を超えているとCSISは指摘している(図-3)。 EV1台当たりの補助額は、18年1万3860ドルに達し、20年まで1万ドルを超えていたが、生産台数の増加もあり、23年には4588ドルになっている。 この計算に含まれていない補助もある。一つは地方政府による補助だ。消費者への補助に加え、工場への土地の提供などもある。 二番目に金融面の補助だ。金利低減(CSISレポートでは、産業・商業用貸付金利の半分)、資本注入がある。 三番目に、蓄電池製造をはじめとする部品メーカーへの補助だ。世界シェアの4割近くを握る世界一の蓄電池メーカ寧徳時代新能源科技(CATL)は23年に8億ドル強の補助金を得ている。 大きな補助金により公正な競争環境が歪められているとの批判がある一方、幼稚産業を育てるためには必要な措置との指摘もある。1台当たりの補助額は減少し、23年には米国のEV補助額7500ドルを下回っている。 補助制度もあり、中国ではEVメーカ数は200を超えている。内燃機関自動車を含め自動車生産能力は年産4500万台との説もある。 過当競争のため中国製EVの国内価格は競争力のあるレベルに設定されている。中国では、EVは相変わらず売れ行き好調だ。