今年のハースF1は一味違う。小松礼雄代表の新体制で進められるチーム改革、カギは“コミュニケーション”にあり
ハースF1は2024年から小松礼雄を新代表に据えてシーズンをスタートしたが、チームの変化はトップの顔ぶれが変わっただけにとどまらない。 【ギャラリー】F1史上最も醜い、2014年のF1マシン全車 昨年、根本的に決勝レースで機能しないVF-23でコンストラクターズランキング10位に終わったハース。チームオーナーのジーン・ハースは進歩のなさに不満を抱き、ランキングを上げるために必要なリソースをめぐりギュンター・シュタイナー前代表と対立し、今年に向けて契約を更新しないことを決めた。 そして今年は、シュタイナー前代表の代わりに、チームでエンジニアリングディレクターを務めてきた小松を起用。エンジニアリング主導のアプローチを求めた。実際、マクラーレンではエンジニア出身のアンドレア・ステラがチーム代表に就任し、チームは軌道に乗ることができたのだ。 ただ、ハースはマクラーレンではない。同じレベルの施設はなく、ビジネスモデルも異なる。ハースはイギリス・バンベリーの本部に加え、フェラーリのイタリア・マラネロにあるファクトリーにも拠点を構えている。フェラーリはハースにパワーユニットとリヤエンドを供給しており、イタリアの大手レーシングカーコンストラクターであるダラーラも技術協力しているなど、様々な拠点と連携を取りマシン開発・製造を行なっている。 これらの異なる施設とチームをより効率的かつ高性能なモノとするため、小松代表は技術部門の再編に着手。新たに設けた車両パフォーマンス主任に、ダミアン・ブレイショーを昇格させた。また、フェラーリから出向していたシモーネ・レスタがテクニカルディレクターを離れ、後任には元チーフデザイナーのアンドレア・デ・ゾルドが就任した。 ふたりの内部昇格は、ガーデニング休暇を取らずに即戦力として使えるという点で有益だが、小松代表は他チームから大枚をはたいてスタッフを引き抜く必要性を感じていたのではなく、既にチームにいる主要スタッフを信頼していたことを示唆していた。 「最初から言っていた通り、我々には本当に優秀な人材が揃っています。彼らに安心感を与えることが重要なんです」 モナコGPで小松代表はそう語った。 「(ミスを犯しても)良いです。オープンかつ透明性を持たせること、それが最も重要なことです」 「今朝も色々なことが話し合われましたし、ミーティングはとても健全なモノでした。それについては非常に満足しました」 「必ずしもみんなが聞きたかった内容ではないこともありました。しかし守りに入る人は誰もいませんでした。我々は自分たちの知識の限りを尽くして、『これが真実。それに関して我々は何をしているのか? 行動計画は?』と話をしています。それは非常にポジティブなことです」 「例えば、低速コーナーでは思ったほどマシンが良くなりませんでした。それをピンポイントで指摘できたのは良かったです」 ただ、ハースの内部改革に課題がない訳ではないのは明らかだ。モナコ仕様のリヤウイングは、レギュレーションよりもDRS開口部が広く予選後の車検で不合格となった。 これはチーム内でのコミュニケーションエラーが原因で、デザイナーがメカニックに新しいウイングを異なる方向でセットアップするよう伝えていなかったことと、コースサイドのチームのチェックが十分ではなかったことが関係していた。 この失格でハース2台は、モナコGP決勝を最後尾から迎えることとなり、レースでは1周目の大クラッシュでダブルリタイアとなった。 失格はチームに痛手を負わせたが、小松代表としては、チームが自己満足に浸らず、責任を持って失敗から学ぶ必要があることがあることを示す、有益な事例であったと言う。 「もしデザイナーが『設計の意図がこれまで使っていたウイングとは少し違うので、このようにチェックする必要がある』と明確に伝えていれば、それが助けになっていたはずです」と小松代表は語った。 「しかし同時に、他の情報があったとしても、コースサイドのチェックで合法性を全面的に確認すべきでした」 「我々はチームの失敗としてこれを受け止め、そこから学び、同じ過ちを繰り返さないようにしなければなりません」