男性に多い膀胱がんを知ろう

「男性に多い膀胱がんを知ろう」＜30＞ 　「膀胱（ぼうこう）がん」は早期に発見すると根治できますが、進行がんで発見されると予後が難しい。膀胱がんの早期発見には、やはり「尿検査」が欠かせません。しかし、尿検査が陽性でもがんが発見されるのは1％程度。早期発見のために、より高精度の膀胱がんの検査が待ち望まれています。 　そこで、私たちが着目し研究をしているのが「尿中のエクソソーム」を用いた新しい検査法です。「エクソソーム」とは細胞外小胞の一種。細胞が分泌する細胞外小胞は組織の再生を促す物質などからできています。そのひとつのエクソソームは細胞同士のメッセージの伝達をしているメッセンジャー。がんから出てきたエクソソームを調べるとがんの特徴がわかるのです。 　そこで、エクソソームのたんぱくを解析し、膀胱がん患者さんの尿中でのみ、そのたんぱくの「Epha2」が上がっているのがわかったのです。これが膀胱がんの新規診断マーカーです。これを測定する検査法にも成功し、企業とともに共同研究をしています。精度は80％で、臨床に向けてさらなる研究に取り組んでいます。検査時間は4～5時間で済みます。ただ、この検査が一般的検査として登場するにはあと4年程度、2020年代の後半を目指しています。 　それとともに期待されているのが「膀胱がんの遺伝子検査」。膀胱がんの細胞や膀胱がんの遺伝子変異をしたDNAが尿中にあるのです。それを集めて調べ、遺伝子変異のある人は「がんがあります」と診断できるようになったのです。私たちは、この研究に7年前から海外の研究者たちと共同研究を行っていました。私たちのデータでも90％の高い確率で膀胱がんを断定できます。 　これも2020年代後半には国内に導入される可能性があり、膀胱鏡を行わなくても診断がつくようになります。身体に負担のない検査で「膀胱がんの有無」がわかります。そんな日が、すぐそこまで来ているのです－。（取材＝医学ジャーナリスト・松井宏夫）（終わり）