<映画ドラえもん のび太の地球交響楽>「ドラえもん」で“音楽”を描く挑戦 のび太の「の」の音の誕生秘話 今井一暁監督に聞く
音そのものへのこだわりはもちろん、音を映像化することにもチャレンジしたという。
「音は目に見えないものなので、映像にするのは本来難しいですよね。でも、映画ですし、音をビジュアル化できたほうが楽しいし、面白そうだよなと。やはり、子供たちが見る時にちょっとでも『面白い』と思える画面になったほうがいいなということで、今回の舞台となる惑星ムシーカの世界観では、音を発したら不思議なエネルギーの結晶体のようなものがキラキラと光るという設定にしました。音の種類に合わせて、いろいろな形の結晶体がキラキラと出たら面白いというイメージで、今回ファーレのビジュアルを考えました。例えば、音遊び的に、いろいろな音を鳴らしていたら、なんだか楽しくなってくるような、あの感じを映像にできたらすごくいいなと思っていました」
今井監督は、今作においては「音に絵を合わせていく作業」だったといい、「すごく労力、技術の必要なことだった」と振り返る。
「そうした音楽を組み込みながらも、ちゃんとストーリーにして最後まで持っていくということが本当に難しいというか。何という題材を選んでしまったんだ!と何度も後悔しました(笑い)。『本当にちゃんと着地するのだろうか』と、最後まで手探りしていって、出来上がっていったような感じですね」
◇ヒーローを描かない藤子・F・不二雄作品 「ドラえもん」らしさとは?
「映画ドラえもん」シリーズで、また一つ新たな挑戦となった「のび太の地球交響楽」。同シリーズでは、さまざまなテーマが描かれ、新たな試みがなされてきたが、最も大事にされるのは「ドラえもん」らしさだという。今井監督にとっての「ドラえもん」らしさとは?
「僕はもう何周もしてしまって、分からなくなっていますね(笑い)。極論、ドラえもんとのび太くんたちがいれば、『ドラえもん』じゃないかくらいに思ってしまうのですが。やはり、藤子先生の魂というか、作品のテイストの中で、ヒーローを描かないんですよね。必ずちょっと間抜けだったり、滑稽(こっけい)だったりするキャラクターを描いていて、ヒーローを格好良く描いている作品ってほぼない。だから、のび太もヒーローではないですし、いじめられっ子で特技のない普通の小学生。そんなのび太がドラえもんとひみつ道具の力を借りて、友達と冒険して、本来だったらできないようなことをやってのけてしまう。その魅力があれば『ドラえもん』になるのではないかという気がしています。ドラえもんがいたらのび太くんでもあんなことができるから『僕も!』という夢があるんだと思います」