<映画ドラえもん のび太の地球交響楽>「ドラえもん」で“音楽”を描く挑戦 のび太の「の」の音の誕生秘話 今井一暁監督に聞く
1980年に第1作が公開され、長い歴史を持つ「映画ドラえもん」シリーズで、「音楽」をテーマにした作品は今作が初めて。藤子さんの原作でも、音楽を題材にしたひみつ道具はあっても、「音楽」をテーマに描かれたエピソードは少ないという。
「『音楽』はこれまで取り上げてこなかった題材だと思います。それを今回、無理をして『音楽でやりたい』と。やはり、スタッフの皆さんも『ドラえもんで音楽?』『どうなるの? 全然想像がつかない』とピンとこない感じはありました。原作にもなかなかヒントがないテーマでもありました。とはいえ、子供と音楽というのは、ディズニー作品もしかり、ものすごく近しいものがあると思います。だから、これを「ドラえもん」で描かないのはもったいない、と。絶対うまくやればできるなという思いがありました。というか、ドラえもんはうまくやれば何でもできると思っているんですけど(笑い)」
「ドラえもん」で音楽を描く。今井監督が最も頭を悩ませたのはストーリー展開だった。
「音楽をテーマと言っても、『ドラえもん』なんですよね。音楽を『ドラえもん』の世界に落とし込まなければいけない。それに、見るのは子供たちなので、そんなに大人向けのものでもない。音楽を扱うアニメはたくさんあるのですが、音楽を通した人間ドラマであるとか、成長の物語が多いので、『ドラえもん』でやるのであれば、違うんじゃないか?と。あとは、ただ同じ場所で楽器を演奏しているだけでは、ハラハラわくわくするような物語にはならないじゃないですか。それでは子供たちが楽しめない。音楽を題材にしながらも、『どうなっちゃうんだろう?』とハラハラわくわくするような、いつもの大冒険の『ドラえもん』というものにどうしたらなっていくか?と」
音楽を「ドラえもん」の世界に落とし込むため考えられたのが、音楽がエネルギーになる惑星で作られた音楽(ファーレ)の殿堂であり、世界から音楽を消してしまう不気味な生命体・ノイズだった。ドラえもんたちは、地球を脅かすノイズに音楽の力で立ち向かうことになる。