命のバトンリレーでノラ猫さんを愛されるネコさんに 訪れる悲しみも受け止めて ねこから目線。の現場から
その後、晴れて正式譲渡成立となったノリスケ君。ユーモアあふれる里親さんと愛嬌たっぷりのノリスケ君の生活ぶりは、写真を見るだけで笑みがこぼれてしまうほど幸せそうでした。
以前、猫の保護活動をしていると話したところ、「自分の娯楽のために猫を飼うことには気が引けるんです」と言われたことがあります。なるほど、まだまだ社会の中では猫を飼うことは〝買うこと〟と同義なんだと思いました。「死ぬのがかわいそうだから飼わない」という意見もよく耳にします。でも死は必ず訪れることで、かわいそうかどうかはどのように亡くなったかによると思います。
看取りはとてもつらく、何度経験しても悲しくて仕方ありません。でも自分がその悲しさを受け入れることで、その猫の死が路上でのたれ死ぬ名もない「ノラ猫」のかわいそうな死から、愛され惜しまれる幸せな「飼い猫」の死になるならば、それは猫のために受け止める価値のある悲しさだと思っています。「自分のために猫を飼う」という側面も当然ありますが、「猫のために自分の人生の一部を提供する」と考えていただけたらうれしいなと思いました。
多くの保護猫たちに、飼い猫になるチャンスが与えられますように!
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大阪を拠点に、猫にメリットがあると思えることなら何でもお手伝いする「猫の便利屋さん」を営む小池英梨子さん。ネコの目線で取り組む活動から見えるあれこれを、月1回つづってもらいます。
小池英梨子
立命館大学大学院応用人間科学研究科対人援助学領域修了。「ねこから目線株式会社」(大阪市)代表、「人もねこも一緒に支援プロジェクト」(NPO法人)代表。平成16年から猫の保護譲渡やTNR活動をスタート。大学院でノラ猫をテーマに「共生と共存社会のリアリティ」について研究し、29年に猫の多頭飼育崩壊など、ヒトの福祉と猫問題への並行支援が必要なケースに対応するため「人もねこも一緒に支援プロジェクト」を立ち上げる。30年に保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」を設立。京都、福岡、沖縄にも拠点を置き、ライスワークもライフワークも猫にまみれている。