親が認知症になる前に利用できる「家族信託」って知っていますか?
高齢化の進展に伴い、認知症患者が増加しています。内閣府の「令和6年度版高齢社会白書」によると、2025年、65歳以上の認知症の数は、MCI(軽度認知障害)を合わせると1000万人を超え、今後増えていくことが予測されています。このような背景から、将来、自分や親が認知症になった場合にどう対処すべきか悩んでいる方も多いでしょう。 今回は、特に財産管理の観点に注目して、認知症になる前に利用できる「家族信託」について解説します。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
そもそも「信託」とは何か?
信託とは、大切な財産を信頼できる相手に託すことです。例えば典型的な信託では、財産を持っている人が、特定の目的(信託目的)を実現するために他者に財産を託します。その相手は、信託目的を達成するために、その財産の管理や処分を行います。信託には、主に次の2つの機能があります。 ・財産の管理・処分機能 認知症のリスクがある老親の財産管理を、生涯にわたり担う機能 ・資産承継先の指定機能 遺言と同様に、財産を自分が希望する方法で円滑に承継できる機能
家族信託とは?
家族信託を理解するには、商事信託と比較して考えることが重要です。商事信託は、信託銀行などに報酬を支払い、資産運用を任せて資産価値の増加を図るものです。信託銀行では、原則として信託できる財産が金銭に限られます。 一方で、家族信託は、信頼できる家族に財産管理を託します。信託できる財産は金銭に限らず、不動産なども含まれ、契約内容を自由に設計できることが特徴です。営利目的で行う商事信託とは異なり、家族信託では家族間での契約が中心となるため、報酬が発生しないケースがほとんどです。
家族信託に関わる主要な関係者
家族信託を検討する際に、主要な関係者を理解しておくことが重要です。 委託者:財産を持っている人(例:父母、祖父母) 受託者:委託者から財産の管理を託される人(例:子、孫、甥、姪) 受益者:管理を任せた財産(信託財産)の受益者(利益を受け取る人、通常の信託においては、委託者=受益者) 加えて、任意で「信託監督人」や「受益者代理人」を置くことができます。これにより、受託者の行為を監督したり、受益者の利益を守ったりすることが可能です。