中国メディアが注目「日本の警察は過激化した単独犯『ローンオフェンダー』を止められるのか」 首相官邸と自民党襲撃など相次ぐ犯行
対策新部署に立ちはだかる壁
日本のローンオフェンダーのなかには、他者を巻き込みたいという願望に突き動かされている人もいるという。2021年8月、小田急線で無差別刺傷事件を起こした対馬悠介(当時36)のケースは、不特定多数を巻き添えにした「拡大自殺」だと石塚は言う。 UNICRI(国連地域間犯罪司法研究所)の山本麻奈と濱口佳和は、「日本のローンオフェンダーたちは自己肯定感が低く、自身の失敗の原因は社会にあると考える傾向にある」と指摘する。 経済的な困窮も、動機になりうる。2019年に起きた京都アニメーション放火殺人事件で、36人を殺害した罪などに問われている青葉真司(当時42)は、若い頃から貧困に苦しんでいた。彼は京都地方裁判所での一審で死刑判決を受けたが、判決を不服として控訴している。 ローンオフェンダーによる犯罪が相次ぐなか、警視庁は組織改編をし、2025年にローンオフェンダーの捜査や対策をする専門部署を公安部に新設するという。同部署は、不審者の動向や、SNS上の書き込みなどの情報を収集することなどにより、事件の未然防止を目指す。 こうした部署の設置は心強いが、専門家は、法的、戦略的に大きな壁が立ちはだかるとみる。 犯罪学を専門とする東京女子大学のデイビッド・ブルースター准教授は、警察によるローンオフェンダーの追跡が、個人情報保護法によって困難になるのではないかと懸念する。 「ローンオフェンダー対策を担う新部署にどれぐらい予算が割かれるのかも気になります。予算が少なければ、形骸化した組織になる可能性が高いでしょう」とブルースターは言う。 石塚は、犯罪に走る可能性がある個人のネット検索履歴に警察がアクセスできる特例を認める法改正が必要だと指摘する。 「新部署は、膨大な情報量をどう扱うかについても早急に戦略を立てる必要があります。どのように情報を収集、分析するかが、大きな課題になると言えるでしょう」
Julian Ryall