2型糖尿病患者の「肝細胞がん」発症リスク低下 糖尿病治療薬の新たな可能性が明らかに
中国の香港大学らの研究グループは、「2型糖尿病患者における肝細胞がんの新規発症リスクに対して、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の予防効果を検討したところ、DPP-4阻害薬群と比べてSGLT2阻害薬群で肝細胞がん発症リスクが有意に低かった」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。 【イラスト解説】「肝細胞がん」を疑う4つの症状 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: 中国の香港大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。 中路先生: 今回発表された内容は、中国の香港大学らの研究グループによるもので、研究結果は学術誌「Journal of the National Comprehensive Cancer Network」に掲載されています。 研究グループは、香港の医療データベースから2015年1月1日~2020年12月31日にSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を1週間以上投与された18歳以上の2型糖尿病患者を対象に研究を実施しました。24万269人/年の追跡期間で、肝細胞がんの新規発症は166例でした。内訳はDPP-4阻害薬群で130例、SGLT2阻害薬群で36例でした。 この結果を解析したところ、1000人/年あたりの肝細胞がん新規発症率は、DPP-4阻害薬群で1.10、SGLT2阻害薬群で0.29でした。また、がん関連死は、DPP-4阻害薬群で5.91でしたがSGLT2阻害薬群では1.06となりました。全死亡では、DPP-4阻害薬群で23.59、SGLT2阻害薬群では4.98となりました。いずれの場合も1000人/年あたりの発生率がSGLT2阻害薬群で低いことがわかりました。 研究グループは「DPP-4阻害薬と比べてSGLT2阻害薬は、肝硬変または進行した肝線維化、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の合併有無にかかわらず2型糖尿病患者における肝細胞がんの新規発症リスクを低下させた」と結論づけています。