「新鮮だから大丈夫!」鶏肉をレアで食べる人が知らない恐ろしすぎるリスク
刺身文化が根付いていることから、世界の中でも生肉に対する抵抗感が低い日本人。しかし、軽い気持ちで食べた肉刺しや鶏たたきが、命にかかわる食中毒を招いたり、重篤な後遺症を引き起こしたりする危険性もあるのだ。科学ジャーナリストが食中毒のリスクを説く。本稿は、松永和紀著『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 生肉食の基準を変えた ユッケによる食中毒事件 2011年4月に焼肉店で起きたユッケによる食中毒事件を覚えている人は多いでしょう。 牛肉を生で食べるユッケが腸管出血性大腸菌で汚染されており、181人が発症し子ども3人を含む計5人が亡くなりました。 この事件をきっかけにユッケや肉たたき、肉刺し、タルタルステーキなど、牛肉を生で客に提供する場合に守らなければならない「規格基準」が2011年11月、できました。 「冷凍していない枝肉から切り出した肉塊を速やかに衛生的な容器に入れて、表面から1cm以上の深さを60℃で2分間以上加熱した後、速やかに10℃以下に冷却する」など、多数の条件を守らなければなりません。 牛の約1割は腸内に腸管出血性大腸菌を持っていますが、症状は出ません。屠畜して骨や内臓などを切り分けて枝肉にするときに、体内の腸管出血性大腸菌が肉に付かないように十分注意されますが、ゼロにするのは難しいのです。肉の保存期間が長くなると、表面にいた菌が肉の塊の中に入り込んでゆくことも実験で確認されたので、対処する加熱法が決められました。 客に提供するには、衛生的な専用施設や調理器具を用いて、講習を受けた人が加工調理を行わなければなりません。そのため、ユッケや肉たたきは焼肉店などでは非常に高価なメニューとなりました。家庭では汚染のない肉塊を入手して衛生的に加工するのは無理なので、ユッケや肉たたきなどを作って食べるのはやめるべきでしょう。 さらに、牛レバーを生で食べる「レバ刺し」は提供禁止になりました。レバーは中に腸管出血性大腸菌が入り込んでいる可能性があり、生での殺菌は不可能と判断されました。