「新鮮だから大丈夫!」鶏肉をレアで食べる人が知らない恐ろしすぎるリスク
カンピロバクターは、食中毒から回復した後に、ギラン・バレー症候群になる場合があります。急に手や足に力が入らなくなる病気で寝たきりになってしまう人もいます。 日本人は魚を刺身でよく食べるせいか、生食に抵抗が薄いのかもしれません。ソーシャルメディアではしばしば、鶏肉の生食料理や中が生のハンバーグ、ピンク色のとんかつなどが「おいしい」と話題になります。でも、肉と魚では付いている菌やウイルス、寄生虫などの種類が違うのですから、同一視してはいけないのです。 なお、馬刺しは普通に食べられるけれど、と気になる人もいるでしょう。馬は腸管出血性大腸菌やカンピロバクターを保有していない、とされています。しかし、筋肉中に住肉胞子虫の一種、「ザルコシスティス・フェアリー」がいる場合があり、馬肉を中心部までマイナス20℃以下で48時間以上冷凍すると死ぬことがわかりました。厚生労働省が通知を出し、現在は冷凍工程を経た馬刺しが提供されています。 ● ローストビーフは 「中は生」ではない 牛レバ刺しが規制強化された際によく聞かれたのが、肉たたきは特別な製法が求められるのにローストビーフがそうではないのはなぜ?という質問。実は、ローストビーフは食品衛生法上は「特定加熱食肉製品」に位置付けられ、中まで加熱しなければなりません。中は生、ではないのです。 事業者が製造販売する場合には、肉の管理や中心部の温度など、細かいルールが決まっています。家庭で調理する際には、購入するまでの肉がどのような温度でどう管理されていたかなどが不明なため、肉の中心部の温度が63℃になってから30分間維持するか、それと同等の条件である中心部が70℃で3分間、あるいは75℃で1分間の加熱をすることで、殺菌でき安全に食べられます。 肉の中心部の温度をしっかり上げるには、かなりの時間がかかります。一時、塊の牛肉の表面をフライパンで数分焼いてからアルミホイルで包んで保温して放置し、余熱で火を通す簡単レシピが流行しました。しかし、そのやり方では中心部の温度が十分に上がらず殺菌できません。内閣府食品安全委員会が2021年、このレシピを止めるように呼びかけ、有名料理研究家やテレビ番組のレシピなども変更されました。
松永和紀