「ASMR」が心地良いのはナゼ? 炭酸水のシュワシュワ音で脳波を解析「心の治療に役立つ」期待も
耳元などが反応
ASMRで反応する体の部位は、耳元や首筋、背筋、頭部が多いそうよ。近藤教授は、ASMRには体温や血圧などを自動で調節する「自律神経」のうち、体をリラックスさせる副交感神経が関係すると考えているわ。ASMRの動画を寝る前に見る人が多いそうだけどうなずけるわね。 そもそも、なぜASMRが存在するのかは諸説あるわ。近藤教授は、「ASMRは霊長類が行う毛づくろいなどのスキンシップの代わりを果たしている可能性がある」と指摘しているわ。 心地よい音と言えば、音楽を聴いた高揚感から鳥肌が立つこともあるわね。でも、こちらは体が活発に動くときに働く交感神経が関わっているとみられているわ。一方、「黒板を爪で引っかく」「発泡スチロールがこすれる」など不快な音もあるけど、これらの音の特徴や不快な理由は明らかではなく、過去の経験や文化の差などが影響している可能性があるそうよ。
心の健康に役立つと期待
ASMRを感じる時に脳はどんな働きをしているのかしら。自治医科大の石下洋平講師(脳神経外科)は、脳の病気を治療するため脳に数十個の電極を装着した患者に協力してもらい、炭酸水が「シュワシュワ」とはじける動画を見せた時の脳波を計測しているわよ。 これまでの解析で、顔に触れた時の感覚が伝わる部位の脳波が関連していたそうよ。ほかにも、聴覚や手足の感覚などに関係する場所とのつながりも示されているの。石下講師は「ASMRの仕組みが分かれば、心の健康に悩んでいる人の治療に役立つのでは」と期待しているわ。 ストレス軽減や心の健康維持のために、積極的にASMRを使う人が今後増えるかもしれないわね。
触覚にも快感センサー
人間は、聴覚だけでなく、触覚・触感によっても心地よいと感じることがある。これには、皮膚にある複数の「触覚センサー」が働いていると考えられている。 慶応大の仲谷正史准教授(神経科学)によると、感覚神経の一種「C線維」に刺激が与えられると、人間の意識や感情に関わる脳の「島皮質」という部位が活性化する。柔らかいブラシで、おでこや腕などのうぶ毛が生えている場所をゆっくりなでると、特に反応しやすいという。 親しい人と抱き合うと緊張が和らぐ。皮膚が押された時に圧力を感じるのが「メルケル細胞」で、感覚神経「Aβ線維」に結合している。詳しい仕組みは分かっていないが、愛情や信頼感に関わる「オキシトシン」というホルモンの血中濃度が高まり、気分が穏やかになるという。 仲谷准教授は「触覚は変化をいち早く察知し、身の危険を判断する感覚。親しい人に触れられることは、危険がないことの裏返しで、安心感をもたらす働きもあるのだろう」と話す。 読売新聞 中村直人 *** 読売新聞東京本社科学部の記者たちが、「理科子先生」とともに科学の最前線に迫る『おしえて! 理科子先生(1)』(読売新聞アーカイブ選書)は、ふりがな付きで子どもにも読みやすく、受験や人生に役立つ知識が満載だ。 懸賞金1万円がかけられて話題のクビアカツヤカミキリとはどんな虫か、昼夜の気温差が300度もある月で人間は暮らせるのかなど、21のギモンに答えてくれる。 協力:新潮社 Book Bang編集部 Book Bang編集部 新潮社
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