大統領選前に相次ぐサイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
ロシア政府が関与した疑いのあるサイバー攻撃が世界中で相次いでいる。7月には米民主党全国本部のサーバーにサイバー攻撃が仕掛けられ、内部メールの内容が流出し、民主党内部でサンダース候補(当時)の勢いを落とすための協議が行われていた事実が判明。委員長が辞任する騒ぎへと発展したが、クリントン候補はサイバー攻撃をロシア情報機関が関与したものであったと断言している。9月にはホワイトハウスのスタッフのメールがハッキングされ、ミシェル・オバマ大統領夫人のパスポート用写真などが流失。米ヤフーも約5億人分の個人情報が盗まれたと発表したが、複数の米メディアは政府関係者の話として、これらのサイバー攻撃にロシア政府が関与している可能性が非常に高いと伝えている。一方で、トランプ陣営とロシアとのつながりを指摘する声もある。
米政府高官がロシア諜報機関の関与に言及
大統領選挙まで1週間を切ったが、複数の米メディアはクリントン候補が依然としてトランプ候補に数ポイントの差をつけてリードしていると伝えているものの、トランプ候補の支持率が直前になって再び上昇傾向にあると伝えるメディアもあり、最後まで展開が読めないのも今回の選挙の大きな特徴だ。これまでの大統領選挙でも舌禍によって道半ばにして自滅した候補は存在したが、トランプ候補には自らの発言によって支持率を下げてしまうケースが頻繁にあり、メディアを何度も賑わせてきた発言が、ここに来て自身の首を絞めているようにも思われる。 一方のクリントン候補は、ファーストレディや国務長官、上院議員としてワシントン政界を生き抜いてきたベテランらしく、失言や暴言とは無縁のそつがない広報戦略を展開。政策からキャラクターまで、あらゆる部分でトランプ候補とは異なるという印象を有権者に与え続けている。これらだけを考えると、クリントン候補の優勢は揺るがないようにも思えるのだが、彼女の支持率が急上昇しない原因の1つが「米政界の中央に君臨する人物で、特定の業界の利益を守ることに必死な、一般の有権者のことをあまり考えていない候補」というイメージの存在だ。彼女のこれまでの経歴を見る限り、ネガティブなイメージ通りの人物とは考えにくいが、クリントン候補の側近や民主党関係者のメールがサイバー攻撃によって漏えいし、クリントン候補の「メール問題」が政治問題化する傾向にある中、クリントン候補は米大統領選挙では初となる「メールによって大統領選挙に敗北した候補」になる可能性に直面している。 民主党全国大会が開催される直前の7月中旬、ウィキリークスは民主党関係者の間で交わされた約2万通のメールを公開。公開されたメールの中には一部の民主党幹部がクリントン候補を積極的に支持する内容のものも含まれており、これがサンダース支持者の怒りに大きな火をつけてしまった。内部メールが公開されたことで、サンダース支持者の間では民主党内部でサンダース氏を追い落とす策略がめぐらされていたのではという疑念が生まれ、民主党は火消しに奔走した。党全国大会委員長を務めていたデビー・ワッサーマン・シュルツ下院議員は、党大会終了後に引責辞任している。 ウィキリークスは民主党内部メールの公開について、情報源を明かすことはなかったが、複数の米政府高官はNBCニュースに対し、ロシア諜報機関が民主党全国大会のネットワークをハッキングした可能性が非常に高いという見解を示した。ロシア諜報機関に関係した人物がウィキリークスにハッキングした情報を流したと米側は考える一方、民主党全国大会前というタイミングを狙って意図的にこの時期に情報が漏えいされたのかについては判断が難しいという政府内部の見解をNBCは伝えている。 9月末には、少なくとも全米20州で有権者を登録・管理しているデータベースがサイバー攻撃を受け、アメリカの情報機関が一連のサイバー攻撃とロシア政府との間に直接的な関連性が存在すると結論付けた報告書を作成したと一斉に報じられた。 果たして、ウィキリークスによる一連のメールの公開や、政府機関等に対するサイバー攻撃にロシアは直接・間接的に関与しているのだろうか?