大統領選前に相次ぐサイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
標的になるのはクリントン、民主党ばかり?
ロシア政府は関与を否定しているが、2007年のエストニア、2008年のジョージア(旧グルジア)におけるサイバー攻撃では、何らかの形でロシアが関与していたという説が今も根強く残る。ロシアがサイバー攻撃を重要視していることは明白で、2014年にはロシア軍参謀総長のワレリー・ゲラシモフ将軍が「ゲラシモフ・ドクトリン」を打ち出し、サイバー攻撃などの情報戦と特殊部隊の強化を重要視していくことを明らかにしている。その方針に実際に沿うような形で、2014年には親ロシア派政権が崩壊したウクライナで、ロシアからと考えられるサイバー攻撃が多数報告されている。アメリカの政府機関や民主党関係者に対するサイバー攻撃にロシア政府が関与しているという米情報機関の指摘を証明できるものはないが、ゲラシモフ・ドクトリンによってロシアはこれまで以上にサイバー戦争における優位性を維持することに力を注いでいるとも報じられている。
ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジの行動にも注目が集まっている。スウェーデンでの性的暴行容疑で、2010年12月にロンドン警視庁に出頭したアサンジは、スウェーデンに身柄が移送される直前の2012年6月にエクアドルに亡命を目指す形で駐英エクアドル大使館に政治亡命を申請した。ウィーン条約を順守するイギリス政府はエクアドル大使館内でのアサンジの身柄拘束は行わないものの、大使館から出た場合には即刻逮捕するという姿勢を打ち出しており、アサンジは4年以上にわたって駐英エクアドル大使館内で生活を送っている。しかし、大使館内からスカイプを使ってロシアの政府系番組に出演し、アメリカ政府への批判を繰り返している。イデオロギーとは無縁に思われたウィキリークスだが、アサンジはクリントンを標的にするとネット上で公言しており、中立性に関しては疑問も少なくない。 不動産事業などを通じてロシア政財界の要因と昔から付き合いがあったとされるトランプ候補だが、ウィキリークスのターゲットになっているのがクリントン候補や民主党関係者ばかりという点と、トランプ候補とロシアとの関係に何らかのつながりが存在するのかは不明だ。クリントン・トランプの両候補による討論会でも、トランプ候補はロシアとの関係について何度も質問を受けていたが、トランプ候補とクレムリンの親密度を測るような具体的な情報はほとんど存在しない。しかし、ウィキリークスによるクリントン陣営のメールの公開は現在も続いており、CNNでコメンテーターとしても頻繁に出演していた民主党全国委員会でトップを務めるドナ・ブレイジル氏が民主党予備選挙中に行われた討論会で、候補者に対する質問の内容をクリントン候補に事前に教えていたことが判明し、ブレイジル氏がCNNのコメンテーターを10月半ばに降板していたことが1日に判明している。背後にロシア政府がいるか否かは不明だが、ハッキングされたメールの公開によって、クリントン候補も少なからずダメージを受けていることは間違いない。