大統領選前に相次ぐサイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
トランプ陣営とロシアにつながりにFBIが関心?
1970年代と80年代に英フィナンシャル・タイムズ紙の特派員としてモスクワで取材活動を続け、ソ連崩壊後もプーチン政権の内幕に関する複数の本を上梓しているジャーナリストのデービッド・サッター氏は、ロシアのオルガリヒやプーチン政権の周辺とトランプ候補との関係に興味を示していることは認めながらも、トランプ候補のロシアとのつながりがどこまで米大統領選挙に影響するのかは分からないと語る。 「冷戦終結後、多くのアメリカ国民にとっての関心事のほとんどは国内問題に変化していった。911テロ後から続く対テロ戦争の影響もあって、中東方面に対する関心は比較的高いのだが、現在のロシアはかつてのソ連のようにアメリカ人の多くが常に関心を示す国ではない。個人的にトランプとロシアとの関係には興味があるが、トランプがロシアや旧ソ連諸国で行ってきた投資やビジネスが非合法だと示す証拠がないのも事実だ。むしろ、トランプに関しては、アメリカ国内で彼がこれまでに行ってきたビジネスや、納税記録の公開に消極的な姿勢、女性を蔑視する発言の方により注目が集まっていると言えるだろう」
米NBCは先月31日、複数の情報機関関係者の話として、FBIがトランプ陣営で選対本部長を務めていたポール・マナフォート氏に対する予備捜査を進めていると伝えた。NBCは8月にもマナフォート氏とロシアやウクライナのオルガリヒ(新興財閥)との関係について報じており、マナフォート氏が数百万ドル規模の取引を行っていたオルガリヒの一部には組織犯罪との関係が取りざたされている人物も。その人物はプーチン大統領の側近とも非常に親しい関係にあるとNBCは伝えている。FBIはマナフォート氏のロシアやウクライナにおけるビジネスの中で違法なものが存在したかについて関心を示しているようだ。 8月にトランプ陣営の選対本部長を辞任したマナフォート氏は、ワシントン内外で長年にわたって活動を続けてきたロビイストで、ウクライナ政府の腐敗防止局は今年8月にウクライナの親ロシア派の政治家からマナフォート氏に対し、「コンサル料」として1200万ドル以上が支払われたことを示す書類が発見されたと発表している。マナフォート氏への予備捜査がそのまま刑事事件の捜査に発展する可能性は低いというのが米メディアの見方だが、これまでにもビジネスを中心にロシアとのつながりを指摘されてきたトランプ候補の元側近の行動が再びメディアに取り上げられたことで、選挙直前のトランプ候補にとってはさらなるダメージになるのではないかとの声も出ている。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト