余命半年、10歳で亡くなった娘。「微力かもしれないけれど、無力ではない」レモネードで伝えたい小児がん支援【体験談】
1本200円のレモネード。微力かもしれないけれど、無力ではない
―― 小川さんは、小児がんについて世の中の人に知ってほしいこと、レモネードスタンドを通して伝えたいことについて、このように話してくれました。 「自分の子どもを亡くしたときの気持ちは、今まで私が生きてきた人生の中で、何にも例えようがない感情でした。きっと私は死ぬまでこの気持ちを背負っていくのだろうなと思います。時間とともに痛みが消えていくこともあるのかもしれませんが、今の私にとっては消えることはありません。はたから見ると日常を取り戻しているように見えると思いますが、いろちゃんを思わない日はないし、いろちゃんの存在は大きいままです。 実際にわが子が病気にならないとわからないこともたくさんあると思います。私もそうでした。わが子が実際に病気になって亡くなったからこそ、いろんな感情に揺さぶられていますが、子どもが元気なときはそんなことを考えたこともなかったです。なのでこの感情を『わかってほしい』とは思いません。 けれども、イベントで『いろはレモネードです!小児がん支援のご協力お願いします!』と大きな声で呼びかけていても、その声が耳にも入っていない人もいるのが現実です。きっと『自分には関係ないから』という気持ちだと思いますが、小児がんで苦しんでいる子どもたちが存在していて、その子たちには支援が必要だということを知ってほしい。少しでも足を止めてもらいたいし、心を寄せてほしいと思います。 人生って本当にいつ何が起こるのかわかりません。いろちゃんだって10歳までは何の病気もなく元気に過ごしていて、当たり前のようにこの先もずっと一緒にいられるものだと思っていました。よく聞く名言ですが、私は『私が生きている今日は、誰かが生きたかった明日なんだ』と思っています。たかが1本200円のレモネードだと思われるかもしれません。しかし、これは微力かもしれないけれど、無力ではありません。 そして、これからの未来を作るのは子どもたちです。このレモネードを買った子どもが『そういえばあのときレモネード買ったなぁ』、ボランティアに参加してくれた高校生たちが、大人になって自分の子どもを持ったときに『こういう活動したなぁ』と思い出して、自分たちの未来に繋いで行ってくれたらいいなと思います」(小川蘭) お話・写真提供/小川蘭さん 取材・文/清川優美、たまひよONLINE編集部 いろはちゃんを失った悲しみは決して消えない。けれども、いろはちゃんのことをたくさん語り継いで、未来の子どもたちのために、小児がん支援を続けていきたいと話してくれた小川さん。昨今は、小川さん以外にも多くの個人・団体が全国各地でレモネードを売って小児がん支援の活動を行なっています。私たち1人ひとりが自分ごととして耳を傾け、寄り添い続けることによって、小児がんと戦っている子どもたちとその家族の明るい未来を作る手助けができるのです。 「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることをめざしてさまざまな課題を取材し、発信していきます。 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年4月の情報で、現在と異なる場合があります。
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