「都心回帰」が相次ぐ大学 東洋大は志願者10万人突破 キャンパス移転の価値とは?
大学キャンパスを移転・再編し、学部・学科の新設・再編を絡める動きが相次いでいます。大きな特徴は「都心回帰」です。郊外型のキャンパスから、大きな駅に近く、都会の中のキャンパスへと移る例が多く見られます。こうした動きの背景には何があるのでしょうか。 【一覧】最近の主なキャンパス移転事例
大学キャンパスの移転・再編ラッシュともいえる動きが続いています。 2023年4月には、中央大学法学部が多摩キャンパス(東京都八王子市)から新設の茗荷谷キャンパス(東京都文京区)に移転したほか、東北学院大学、関東学院大学、大阪成蹊大学が新キャンパスを開設し、新学部の設置や既存学部の移転が行われました。 24年4月には、東洋大学や立命館大学の一部の学部が他キャンパスへ移転しました。25年にも、近畿大学医学部、東京理科大学薬学部、徳島文理大学、龍谷大学などでキャンパスの移転・再編が控えており、それ以降も多くの大学で移転計画が持ち上がっています。 こうした動きに共通して見られる大きな特徴は、「都心回帰」です。中央大学法学部のように、郊外型のキャンパスから、駅からも近く、交通の便が良い都市部のキャンパスへと移る傾向が目立ちます。 リクルート進学総研の小林浩所長はこう解説します。 「18歳人口が年々増加していたかつての時代は、広さを求めて郊外にキャンパスを設置する大学が相次ぎました。ところが、その後、少子化が進み18歳人口が減少に転じていく流れのなかで、各大学とも競争に生き残るため、『交通の便が良く、通いやすい大学』を売りにするようになりました。また、大学進学率が上がって、兄弟姉妹を全員大学に行かせる家庭が増え、親の経済的な負担も増えたため、『実家から通える大学』を選ぶ人が増える傾向にあります」 都市部で一定以上の面積の大学の新設・増設を禁じていた工場等制限法が、規制改革によって2002年に廃止されたことも、キャンパスの都心回帰を後押ししたといいます。 交通の便以外にも、都市部のキャンパスには利点があります。大学通信 情報調査・編集部の井沢秀部長は次のように話します。 「就職活動や企業でのインターンなどを考えても、都市部にキャンパスがあったほうが有利です。例えば東京の場合、午前中に大手町付近の企業で就職活動を終えた後、多摩方面のキャンパスまで電車で移動して授業に出席する……といった動きをするのは、学生にとっても負担が大きいでしょう。また、企業に所属する研究者や経営者を講師として招聘することを考えても、ビジネス街が近いことはアドバンテージになります」