もしもあのときトランプが暗殺されていたら世界はどうなっていたのか?
■ヴァンスを選んだのは暗殺されないため? 暗殺によって神格化されたとしても、大統領選挙は迫ってくる。その場合、大統領選そのものはどうなっていたのだろうか? 自分たちが信奉する神のような存在を殺されたトランプ支持者たちは、前回の大統領選(2020年)後に支持者たちが起こした議会議事堂襲撃事件を超える深刻な衝突に発展していた可能性はないのだろうか? 「トランプ支持者たちが各地で激しい抗議活動を起こした可能性はある」と語るのはアメリカの保守層に詳しい国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏だ。 「もともとトランプ支持者の一部はディープステート(闇の政府)の陰謀を本気で信じている人たちですから、もし7月の事件でトランプが本当に暗殺されていたら、それはすなわち『ディープステートの陰謀が裏づけられた』ということになり、一部地域では暴動や銃撃事件が起きて、治安が悪化していたでしょう。 また、7月の銃撃事件の時点では、まだ共和党の副大統領候補も決まっておらず、トランプの後継候補が存在しなかったので、『こんな状況で大統領選はやらせない!』と選挙自体行なえない州が出ていたかもしれません」 そんな暗殺を巡る混乱の中で選挙が行なわれた場合、存在感を発揮した可能性がある人物がいるという。 「それは当初、無所属から大統領選に立候補し、その後、選挙戦から撤退してトランプ支持を表明したロバート・F・ケネディ・ジュニアです。 彼はケネディ家から問題児扱いされて事実上の絶縁状態ですが、それでも伯父のジョン・F・ケネディと父親のロバートを暗殺され『アメリカ最大の陰謀論』に彩られた家系の人物ですし、自身も反ワクチンの言説などで知られるバリバリの陰謀論者ですから、トランプというカリスマが失われた場合には、陰謀論者たちの票の受け皿になる可能性があります。 ちなみに陰謀論者は右派だけでなく左派にもいるので、共和党だけでなく、一部の民主党票もロバート・F・ケネディ・ジュニアに流れていたかもしれません」 ちなみに、この7月の暗殺未遂がトランプの副大統領候補選びにも影響したのではないかと渡瀬氏は指摘する。 「僕が注目したのが、7月の銃撃事件後にトランプがJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだことです。普通に考えたら、大統領選で支持層を広げるためにも女性や非白人系の候補を選んだほうが有利なのに、彼があえて自分の熱烈支持者の『白人男性陰謀論者』を選んだのは、自分が暗殺されないためではないかと思うんです」 どういうこと? 「例えば、元国連大使のニッキー・ヘイリーのような『トランプよりも中道的に見える人物』が副大統領候補ならば、トランプを排除したい人にとって暗殺は一定の意味があるかもしれません。 しかし、ヴァンスのように『トランプに忠誠を誓う陰謀論者』が後継者になれば、トランプを暗殺しても何も変わらない。結果的に自分が暗殺されるリスクが減ると考えてヴァンスを選んだのではないか、と思うんです。まあ、実際にはまた暗殺未遂事件が起きたわけですが......」