EVや太陽光パネルなど中国の「過剰生産」が有害なワケ、世界が危惧する“あるリスク”
資源の乏しい日本が取るべき「貿易政策」とは
まずは、G7間で中国に圧力をかけることだが、あまり効果は期待できないであろう。むしろ、自由貿易の流れが止まってしまうことは日本にとって大きなマイナスだ。 自分の国の産業や農業を関税や規制で守ったほうが自国の利益となるようなオピニオンが横行してしまうが、貿易は財政・金融政策を補完する貴重な手段である。 完全な国内サプライチェーンをつくろうという強引な試みによって、一部の有利な産業は利益を得るかもしれないが、それ以外の多くの産業は利益を失い、すでに不況の打撃を受けている消費者も利益を失うのは、多くの調査研究でも明らかになっているファクトである。 たとえば、「非関税障壁の緩和は、国内総生産を約1.6%押し上げる」(2021年11月19日・プラギャン・デブ他著「貿易によりアジアの経済回復を加速させる方法」)ことが知られている。 実は、資源の乏しい貿易立国・日本は「世界で3番目に貿易障壁が少ない国」(国際貿易障壁指数2023)である。日本経済の活路の一つは、自由貿易にあるといっても過言ではない。 これからの日本の進むべき道は、米国やEUと共同歩調を取る以外に選択肢はないが、中国を締め出してブロック経済をつくるのも好ましいものではない。まずはG7においてTPPのような自由貿易の枠組みを日本が積極的に進化させることだ。 そして、汎用性の高いものにはあまり目くじらを立てず、先端技術を日本で磨き続けること。交渉については、ガリウムなど手に入らないと絶対に困るものを優先させていくべきだろう。
執筆:ITOMOS研究所所長 小倉 健一