EVや太陽光パネルなど中国の「過剰生産」が有害なワケ、世界が危惧する“あるリスク”
太陽光発電市場は「中国依存」が浮き彫りに
中国の不透明な補助金や税優遇による過剰生産能力を「有害」とはっきり断じているのは、G7の強い意志の現れである。 これまで中国の製品輸出は、誰もが予想していたよりも速いペースで進んでおり、中国の製造業黒字(輸出する製品と輸入する製品の差額)は、すでに世界国内総生産の2%近くに達している。この数値は、1980年代の日本や2000年代初頭のドイツをはるかに上回っている。 特に、鉄鋼、アルミニウム、特定のクリーンエネルギー技術などの一部の産業では、中国政府による大幅な支援が行われており、その結果、世界市場が完全に氾濫している。 中国は近い将来、特定の太陽光パネルの部品の95%近くを生産することになるというデータがある。 ・中国は2011年以降、欧州の10倍にあたる500億米ドル以上を投資 ・現在、太陽光パネルの全製造段階(ポリシリコン、インゴット、ウェハー、セル、モジュールなど)における中国のシェアは80%を超えている ・世界は2025年まで、太陽光パネル生産の主要な構成要素の供給をほぼ完全(95%近く)に中国に依存することになる (2022年7月IEA「太陽光発電のグローバルサプライチェーン」) このようにして、太陽光の次はEV、そして汎用半導体へと中国は過剰生産戦略を採用して、世界中で西側企業を市場から現在進行系で駆逐している現状がある。
日本に影響も?中国による「ガリウム」輸出規制
次に、ガリウムについて述べる。 冒頭で少し触れたが、ガリウムは化学元素記号Ga、原子番号31の銀白色の金属である。ほかの金属と合金を形成しやすく、特にアルミニウムとの合金は高い耐腐食性を持つ。ガリウムは比較的無害で、生物に対する毒性が低いため、医療用途でも安全に使用できる。半導体産業、太陽電池、医療分野、高温計測器など、非常に多岐にわたる用途で利用されている。 問題は、中国がガリウムの生産量で圧倒的なシェア(98%)を持っていることである。中国政府は、2023年8月1日から「輸出管理法」などに基づき、このガリウムなどの関連品目について輸出規制を開始した。この規制について、中国は「国家の安全と利益を守るため」と説明している。 WTO(世界貿易機関)のルールでは、原則として輸出規制は認められていないが、安全保障目的の場合には例外が認められている。この例外規定を意識したものであることは明らかだ。 こうした中国を巡る動きについて、日本政府は冷静に国益の観点から行動すべきだ。