【2024年を振り返る・フランス編】「三国志」状態に陥ったフランス、マクロン大統領はフランスに何を残すのか?
■ マクロン大統領の労働市場改革は雇用を生み出したのか? マクロン大統領は任期の1期目において、解雇規制の緩和に代表される労働市場改革を行った。労働者の権利が手厚く保証されていたフランスは、正規職員の解雇規制が厳し過ぎ、若者の採用が増えにくいという構造的な問題を抱えていた。そこにマクロン大統領はメスを入れることで、若者に雇用を生み出そうとしたわけである。 では、マクロン大統領によって進められた労働市場改革はフランスに雇用を生み出したのだろうか。様々な指標があるが、いわゆる雇用弾性値(雇用者数の前年同期比を実質GDPの前年同期比で除した値)の推移でそれを確認してみよう(図表1)。経済が好調であれば雇用が生まれる。改革が成功していれば、その量が増えるはずである。 【図表1 雇用弾性値(雇用増減率/GDP成長率)の推移】 マクロン大統領の1期目の雇用弾性値は0.5%ポイント(つまり、実質GDPが1%増えると雇用者数は0.5%増える関係)だった。前任のフランソワ・オランド前大統領の期間は0.6%ポイントだったため、ほとんど変化はない。コロナショック前までの平均値も0.6%ポイントのため、その影響もほとんどなかったと考えられる。 一方で、マクロン大統領の2期目の雇用弾性値は1.0%ポイントに跳ね上がる。とはいえ、マクロン大統領の2期目に構造改革の効果が出たかというと、それはよく分からない。近年、フランスでも戦後のベビーブーマー世代のリタイアが進んでおり、慢性的な人手不足が顕著となっているため、雇用弾性値の上方シフトはその影響かもしれない。 それに、近年のフランスでは労働生産性(付加価値を雇用者数で除した値)の著しい低下が生じている。景気の実勢に比べて雇用が増え過ぎているわけだが、フランス中銀はその主な理由として、政府による見習い研修生制度を受けて若者の短期間雇用が増えたことにあると指摘している。そうであれば、解雇規制緩和の効果で雇用が増えたとは言いがたい。 雇用関連指標は数多く存在する。マクロン大統領による解雇規制緩和が持つ雇用創出効果に関しては、よりデリケートな分析が必要となるため、別の機会に譲りたい。