清原和博が「もっと早く出会えたら」と慕う名伯楽。「選手と向き合う熱さは何歳になっても変わらない」
「(NPBファームリーグに参入した)同じ新球団でも、新潟(オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ)は独立リーグでは老舗球団(2006年創設)という下地のある中での誕生でしたが、うちはまったくのゼロからの出発でしたので、大変なことばかりでした。 まず野球道具がない。キャンプでも練習ボールの数が足りなくて困ったり、打撃投手もいないので監督やコーチ、野手、時には球団職員が投げたりもします。最初は打撃マシンもなくて練習に支障をきたしていたので、社長に頼み込んで購入してもらいました。予算的に一気に揃えることは難しいので、最低限必要なものから徐々に揃えていきました」 くふうハヤテの選手は、NPB12球団で活躍する選手のように、バットなどをスポーツ用品メーカーから支給されることはまずない。内田コーチは、古巣の広島や巨人と試合をする際、相手チームのコーチにお願いしてボールを分けてもらったり、選手が自腹で揃えなければならないバットは、使用済みの中古を譲ってもらい、配ったりもした。 ■「私はぬるい雰囲気は嫌い」 NPB球団とはいえ、環境面は独立リーグ球団に近いが、内田コーチは「ほとんどの選手は、既存12球団のファーム選手よりも覚悟を持って野球に取り組んでいる」と評価する。 「私が広島や巨人のファームで監督やコーチをしていた頃、なかには『もっと練習しなさい、プロ野球選手になれただけで満足してはいかんよ』と叱咤激励して、首根っこを捕まえなければ自主的に練習しない選手もいました。ですが、今ここにいる選手からは、ほぼ全員から覚悟を感じます。私から何も言われなくてもみな自主的に取り組みます。このチームに来てから、選手に対して『もっと練習しなさい』と話したことは一度もありません。 NPBで解雇されてここに来た選手も、どうにか這い上がろうと必死に取り組んでいます。解雇された理由は技術なのか、あるいは私生活の問題なのか。ある程度遠回しに編成担当者から聞いたりもしていますが、私自身は先入観を持たずに向き合っています。先入観を持ったら指導はできません。必死に這いあがろうとしている彼らの力に少しでもなれるように、体の動く限りは全力で協力できたらと思っています」 取材中、ある場面に目が止まった。