オリンピックも、革命も、オンドリなしには語れない!? フランスとニワトリの関係とは?【動物ドッキリクイズ】
私たちにとって最も親近感のある鳥といえば、ニワトリと答える人も多いのではないでしょうか。食用の卵や肉を確保するための養鶏は古くから人間の暮らしを支えてきました。 【写真12枚】セーヌ川に浮かぶシテ島にそびえる、ノートルダム大聖堂も。フランスのアルプス地方の牧場を悠々と歩くオンドリの姿などを写真で見る そんなニワトリですが、フランスでは古代より国を象徴するシンボルとして人々から親しまれています。そこでクイズの前に、オンドリをめぐるフランスの歴史についてちょっと触れてみましょう! なぜ、オンドリがフランスのシンボルになったかというと、ラテン語の「ガルス(gallus)」という単語が、フランス人の祖先とされる”ガリア人”と、”オンドリ”の二つの意味を持っていたからだそう。 紀元前1世紀の硬貨には既にオンドリの姿が描かれていたと言います。中世初頭には、一旦オンドリ熱は冷めてしまったものの、16 世紀以降、フランス国王の彫刻やコインなどに再び登場。フランス革命時もオンドリブームは続き、さまざまな場面で国の象徴として、そのイメージを浸透させていきました。 一方、ナポレオン1世は自分の紋章にこの鳥が描かれることを嫌い、代わりにワシを選んだのだとか。このようにオンドリは、フランスのあらゆる時代に登場してはさまざまなかたちで語られているのです。 というわけで、今回はフランス人にとって馴染み深い動物、”オンドリ”にまつわるクイズ4問です。全ての正解を知るとさらに両者の関係の深さが分かってきますよ。 【第1問】ニワトリの鳴き声、日本では「コケコッコー」、フランスではどう聞こえる? 正解は「ココリコ」。 日本の「コケコッコー」という響き同様、三つの「コ」が入っている点では結構似ていると言えるかもしれません。古今東西、オンドリに共通した特徴といえばその甲高い鳴き声ですが、英語で犬の鳴き声が「わんわん」ではなく「バウワウ」と聞こえるように、オンドリの鳴き声も国によって聞こえ方は違います。 ちなみにニワトリの鳴き声、英語圏では「クック ドゥードゥル ドゥー」、ドイツでは「キケリキー」、イタリアでは「キッキリキー」、と聞こえるそうです。 またフランスでは最近、「早朝のオンドリの声がうるさい」と、その飼い主を近隣住民が訴えるという騒動が話題になりました。裁判所は「オンドリにも鳴く権利がある。騒音には当たらない」として見事(?)オンドリ側が勝訴したとのことです。 【第2問】パリの超有名観光地にいるオンドリ。その棲み家はエッフェル塔?凱旋門?それとも…? 2024年の夏に開催されたオリンピック・パラリンピックで、パリ市内の様子をテレビなどで観た人も多いのではないでしょうか。 実は、世界遺産にも登録されている「ノートルダム大聖堂」の尖塔に一羽のオンドリが威風堂々と立っているんです!ものすごい場所から市内を見下ろしているこのオンドリですが、あまりにも高い所についているため正直あまり目立ちません。もともとパリジャンでも知る人が少なかったこのノートルダムのオンドリですが、昨年脚光を浴びる出来事がありました。 日本でも大きく報じられた通り、2019年にノートルダム大聖堂では大規模な火災が発生、今も急ピッチで復旧作業が進められています。この火事で前代の青銅製のオンドリ像は崩れ落ちて損傷してしまったことから、昨年新たに金色のオンドリ像が設置され、フランスで大々的に報じられたのです。 ここでピンと来た人もいるかもしれません。教会や建物の上に取り付けられたニワトリといえば、そう、風向計として使われる「風見鶏(かざみどり)」の存在。古くからヨーロッパの景色の一つになっていますよね。ノートルダム大聖堂に設置された金色のオンドリも、不死鳥の如く新たに生まれ変わった風見鶏だったのです。 【第3問】なぜフランスは、国をあげてオンドリの動きに熱狂するの? いきなり謎めいた問題を出してしまいましたが、正解したあなたはかなりのスポーツ観戦好きに違いありません。答えは「サッカー、ラグビー、オリンピックなどのフランス代表選手のユニフォームの目印がオンドリマーク」だからです。 フランス代表選手のユニフォームには、必ずと言っていいほど胸元にオンドリマークが付いています。重要な国際試合の日にはスタジアムはもちろん、街角のパブや食堂、さまざまな場所で歓声や怒号が沸き起こります。そんな時、観客が熱狂する視線の先には、選手とともにその胸元に刻印されたオンドリがいるのです。 ちなみにフランスのスポーツグッズメーカーとして有名な「ルコック・スポルティフ(Le coq sportif)」は「スポーティーなオンドリ」という意味が会社名になったフランスで最も古いスポーツ用品メーカーです。 【第4問】フランスのクリスマスに欠かせないオンドリ! その理由は? その理由はズバリ「クリスマスのご馳走として食べるため」です。フランスではクリスマスのメイン料理として「シャポン」という去勢したオンドリを一羽丸ごとオーブンでじっくりと焼き上げた料理が伝統的に食されます。 「シャポン」は、通常よりも時間をかけて飼育され、年末に向けて出荷される高級食材の一つ。しっとり脂の載ったシャポンのお腹にたっぷりのひき肉や栗を入れて焼き上げて、ノエル(フランスでクリスマスの意)の食卓を盛り上げます。 さて、今回のフランスとオンドリの関係を見つめたクイズ全四問はいかがだったでしょうか? 読者の中には「オンドリばかりが登場して、メンドリの存在はどうなっているの?」と思った方もいるかもしれません。実はフランスでは、よりオフィシャルな国のシンボルとして「民衆を導く自由の女神」こと「マリエンヌ」という女性像が使われています。 オンドリはどちらかといえば、スポーツや海外からの目線を意識した国のマスコットと言えるかもしれません。 私が書きました! オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ) 盛 真理子 上智大学文学部哲学科およびパリ第8大学先端芸術学部美 術研究科卒業。パリを拠点に 現代アートのマネージメント業務を行う傍ら、執筆業にも携わる。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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