海を渡る高松の盆栽、ニースやカンヌで富裕層へアピール…50万円以上の高級品の販路拡大模索
高松市特産の黒松盆栽の欧州への輸出が進んでいる。昨年1月に輸出が本格化してから、輸出本数は4倍に増加。香川県や生産者らは、富裕層向けを視野に「TAKAMATSU BONSAI」として、さらなる魅力発信と販路拡大を目指す。(津田啓生) 【グラフ】盆栽の輸出額の推移
高松市は、全国有数の松盆栽の産地として知られる。県によると、鬼無・国分寺両町を中心に国内市場の8割を生産している。一方で、県内から全国への出荷量は2010年の7万3000本から23年は5万2333本に減少しており、県県産品振興課は「生産者や愛好家が減っていることが影響している」とする。
国内市場が低迷する中、活路を見いだそうとしているのが海外展開だ。アジアや欧米では、「BONSAI」はインテリアやアート作品として注目度が高い。海外に販路を拡大することで、生産者の収入を確保するほか、インバウンド向けの観光資源につなげることも狙う。
高松盆栽の中でも、五葉松は以前から欧米への輸出は解禁されていたが、生産の大部分を占める黒松は、病害虫の侵入の恐れを理由に、多くの国が認めていなかった。それが、20年10月、欧州連合(EU)への輸出が認められた。
ただ、植物防疫所に登録した盆栽園で2年間栽培し、病害虫がつかないようにコンクリート製の台の上で管理するなど厳しい条件をクリアする必要があり、本格的な輸出は昨年1月に始まった。
同課によると、神戸植物防疫所坂出支所で検査し、EU圏に輸出された盆栽は、22年の995本から、23年は4097本で4倍増。大半が高松盆栽の黒松という。
高松盆栽輸出振興会の尾路悟会長は「輸出が本格化し、EU圏や周辺国の園芸業者から盆栽の取り扱いについて、振興会への問い合わせも増えている」と手応えを語る。しかし、課題もある。海外に輸出しているのは価格帯が1本2万円前後で、尾路会長は「輸出にかかる手間に見合うほど、大きな収入につながっていない」と指摘する。