ライオン「詰め替え」推進でプラ使用量8割減。花王と協業で「水平リサイクル」を実現
消費財大手のライオンが、プラスチックリサイクルの取り組みを加速している。 力を入れているのが、洗剤やハンドソープなどの詰め替えパックと、歯ブラシのリサイクルだ。 【全画像をみる】ライオン「詰め替え」推進でプラ使用量8割減。花王と協業で「水平リサイクル」を実現 詰め替えパックについては2020年11月、花王と実証実験に着手。使用済みパックの店頭回収をスタートした。競合企業との協働について、同社サステナビリティ推進部の池西岳樹さんはこう話す。 「店頭ではライバルですが、お客さまから物を集めてリサイクルする取り組みに関しては、ライオンのものだけ集めて他社のものを集めないということはできません。 やはりここは一緒になって回収・リサイクルをしようとなりました」(池西さん) プラスチックの回収・リサイクルと言えばペットボトルが知られているが、ペットボトルと同じくらい身近な詰め替えパックのリサイクルは進んでいなかった。内容物を温度や湿度、紫外線などから守るために不可欠な容器の品質が、リサイクルのハードルを高くしていたからだ。 「日用品は品質を3年間保証しなければいけません。そのために異なる材質の素材を何枚も張り合わせることで品質を担保しています。その点が、リサイクルを非常に難しくしていたのです」(池西さん)
「詰め替え文化」は日本が誇るべき生活習慣
ライオンはそれまでにも、プラスチックの使用を減らすため、濃縮タイプの洗剤や詰め替え商品の開発・販売を積極的に進めてきた。 「洗濯用・台所用の洗剤、シャンプー、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープなどさまざまな日用品の詰め替えパックは、いまや国内出荷量の8割を占めるまでになっています。 従来型の容器を使い続けていたらプラスチックの使用量が非常に増えてしまっていたところを、詰め替えパックなどの推進によって、約80%抑制することができました」(池西さん) 「しかし、プラスチックの使用を抑える取り組みだけでは不十分で、(使用済みのものを)リサイクルしてもう一度資源として活用していくことにチャレンジする必要がありました」(池西さん) そうした危機感が全社的なムーブメントにつながり、ライオンと花王のトップ同士が会社を超えてタッグを組むことに合意した。 それから約1年半後の2023年5月、使用済み容器から生まれた再生材料を一部に使った詰め替えパックの洗濯用洗剤を発売。飲料メーカーが推進している「水平リサイクル」と同じ取り組みを、日用品で初めて実現した。 両社の挑戦は企業や自治体などにも広がり始めた。神戸市では2021年からダイエーやウェルシア薬局などの店頭で使用済みパウチを回収、小林製薬やユニリーバ、牛乳石鹸、コーセー、アース製薬、サラヤなどさまざまな企業も参加するなど一つのムーブメントになりつつある。