消費者の「不安」とどう向き合う? 風評被害を経験した水俣市の漁師が送る福島へのメッセージ #知り続ける
福島中央テレビ
福島第一原発の処理水放出が2023年8月に始まって以降、福島の水産物を応援したいという動きが全国で広がっている。その一方で、福島中央テレビとYahoo!ニュースが共同で行ったアンケートでは、福島県の水産物について6割が安全だと思うと答えた一方、不安に感じると回答した人も2割ほどとなった。廃炉作業や処理水の放出が30~40年続くとされるなか、福島の漁業は、消費者の不安とどう向き合えば良いのか。かつて大きな風評被害を経験した、熊本・水俣市の漁師からのメッセージとは。 11年かけて…娘の遺骨に“おかえり” 福島・大熊町で「いつか暮らしたい」 【東日本大震災13年の“あれから”】
漁業をバカにしているんじゃないか!
「何やってんだと。あまりに漁業をバカにしているんじゃないか!」 その日、福島県いわき市の漁業者は怒りをあらわにしていた。2月7日、福島第一原発で汚染水を浄化する装置から、セシウムなどの放射性物質を含む水が漏れでるトラブルがあったからだ。 怒りの背景にあるのは、2023年8月から始まった福島第一原発の処理水の海洋放出。県内の漁業者は風評被害が起きるのではと不安を募らせていたが、放出後は全国各地で支援の輪が広がり、福島の水産物は瞬く間に多くの人に「おいしい!」と言ってもらえる存在になった。全国の人たちが応援しているからこそ、福島の漁業が順調に進んでいるからこそ、“海に関わるトラブルはないように”と、漁師も語気を強める。 「海に水が出た場合どうなるんだと。そうなれば風評だけではすまないべ。しっかり管理してほしいってことは訴えたいね」 2023年10月には、放射性物質を含む液体を作業員が浴びるトラブルが起きていて、処理水の海洋放出後にこうしたトラブルが起きるのは2回目となる。福島の漁業者はその度に、“風評が起きたら困る”と不安を吐露する。
福島の水産物…不安に感じるは2割
福島中央テレビは2024年2月5日・6日に、全国のYahoo! JAPANユーザーを対象にアンケートを行い、3000人から有効回答を得た。 そこで福島県産の水産物の安全に関するイメージを質問した結果は図の通りとなった。このほか、福島県産の水産物を食べたいかを質問したところ、「食べたい」が約5割、「食べたくない」が約1割、「どちらでもない」が約4割となった。 理解や応援が広がる一方で、「不安・食べたくない」という声が一定数あるのも事実である。消費者に疑念を持たれるようなトラブルや事故が福島第一原発で生じれば、「どちらともない」と回答した人たちを含め、「不安・食べたくない」という考えにシフトすることは想像に難くない。 廃炉作業や処理水の放出が30~40年続くとされるなか、福島の漁業者は、消費者の不安とも向き合いながら、薄氷を踏む思いで毎日海に出ているのだ。