線路立ち入りの女性追い、宮本警部殉職 警視庁150年 125/150
警視庁板橋署常盤台交番の前に「誠の碑」と呼ばれるモニュメントがある。同交番に勤務していた宮本邦彦警部=殉職当時(53)、2階級特進=の功績を伝えるため、平成19年6月に地元住民と有志の寄付によって設けられた。 同年2月6日午後7時ごろ、宮本警部は東武ときわ台駅近くの線路内に入る女性を発見。交番に連れて行ったが、女性は逃げ出して再び線路へ飛び込んだ。「止まってくれ!」。叫びは届かず2人ははねられた。女性は一命を取り留めたが、宮本警部は6日後に殉職した。 宮本警部は昭和51年に警視庁巡査拝命。地域部門を中心に勤務し、平成16年に板橋署へ配属された。「堅物すぎるほどまじめ。思いやりがあって地域で仕事をすることにこだわった人だった」と懐かしむのは、交番の向かいでうなぎ店を営む河原弘さん(69)。「交通違反を見つけると、足が速くもないのに懸命に追いかけるんだ。お年寄りが横断歩道を渡り切れないでいると、よく手伝っていた」と語る。 刑務所を出所したばかりの人に道を聞かれ、「自分を大切に」と言って傘を貸したことも。転んだ子供を見つけては絆創膏を貼ってあげ、慕われたという。 座右の銘は「伏してぞ止(や)まん」。誠実な生き方は絵本にもなった。毅然(きぜん)と市民を守る姿は住民の心に刻まれると同時に後輩警察官にも受け継がれている。(内田優作)